北陸の冬の風物詩ともいえる「かぶら寿司」は、塩漬けしたカブに塩漬けしたブリを挟み、麹で1週間から10日ほど発酵させたなれ寿司の一種だ。石川県や富山県の一部に伝わり、正月などのハレの日の料理として親しまれてきた。優しい甘みと酸味が特徴で、冬になると飲食店や土産物店に並ぶ。
熟成ブリの食感と起源
発酵食品を扱う「四十萬谷本舗」(金沢市弥生)の6代目店主・四十万谷正和さん(42)は、熟成されたブリについて「ハムのように柔らかい」と表現する。あえて時間を置き、発酵を進めて酸味を強くして食べる人もいるという。
かぶら寿司の起源は、豊漁や安全を祈願して漁師が正月に食べたなど諸説あるが、いつ頃から食べられるようになったかは分かっていない。ただ、加賀藩料理人の記録に「ブリとカブまたはダイコンを用いたすし」の記述があり、四十万谷さんは「その原型は、江戸時代中期に遡ることができるでしょう」と説明する。
夏に楽しむ取り組み
金沢出身の文豪・泉鏡花が尾崎紅葉に贈るなど贈答品としても重宝されてきたかぶら寿司。この先も親しんでもらうための取り組みが始まっている。四十萬谷本舗では、かぶら寿司作りの体験教室を開催。生産や加工分野で卓越した技術を持つとして日本特産農産物協会から「かぶら寿しマイスター」に認定された工場長の山中和幸さん(52)らが指導し、毎回多くの参加者が集まる。
「せっかく来たのだから食べたい」という夏の観光客の声に応えるため、県工業試験場や大学と連携して温度や湿度など最適な発酵条件を調べ上げ、夏でも作れるようになった。
粟津温泉(小松市)の旅館「旅亭懐石のとや」では、ホームページでお茶漬けにするなど一風変わったかぶら寿司の食べ方を紹介している。若女将の桂木美咲さんは「ご飯と一緒にいただいたり、お酒を飲む人はしょうゆをつけて濃い味にしたりするなど色んな楽しみ方ができる」と話す。
記者のひとこと
県民となって3年目を迎えた記者は、今回初めてかぶら寿司を食べた。「麹の甘みが鼻から抜ける感じで、日本酒にバッチリ合いそうだ。冬だけではもったいない。企業努力に感謝しながら、暑い中、仕事を頑張った日のご褒美としていただこう」と綴っている。
四十萬谷本舗のかぶら寿司の漬け込み体験は、弥生本店で11月と1~3月に開催。要予約(076・241・4173)。旅亭懐石のとやは、冬季に懐石料理や通信販売でかぶら寿司を扱っている。



