フードデリバリー市場で、出前館が新たな攻勢に出ている。2025年9月から「お店価格で出前館」を開始し、2026年4月にはお笑いコンビ・ダイアンの津田篤宏さんを起用したテレビCMをスタート。矢野哲社長は「本当にいいものを届ける体制が整った」と語り、アクセルを踏むタイミングだと強調する。
「お店価格」で価格バリアを撤去
矢野社長は、多くの消費者がデリバリーを利用しない理由として、店頭価格より本体価格が高いことを挙げる。「その大きなバリアーをなくしてしまえば、もっと多くの人に利用してもらえる」と述べ、シンプルな発想から「お店価格」のネーミングが生まれたと説明する。同社はデリバリーの日常化を目標に掲げており、選択肢として「自炊」「外食」「テイクアウト」「デリバリー」の4つがある中で、顧客に選ばれ続けるための施策を徹底する方針だ。
社内の雰囲気について矢野社長は「本当にワクワクしている」と表現。ここ数年はサービスの質を高めるために準備期間として閉じこもっていたが、ようやくマーケティングに予算を投じて成長する段階に入ったという。投じた予算を使うことは簡単だが、重要なのは顧客に選ばれ続けるために何をすべきかを考え抜くことだと強調する。
社長自ら配達員として現場を体感
矢野社長は現場をより深く知るため、自ら配達員になることもある。最低でも月に1回は配達を行い、実際のオペレーションや顧客の反応を直接確認している。この経験から、デリバリーの利用が商圏を何倍にも広げ、限られた時間の有効活用につながると実感しているという。
出前館は2000年に「出前館」サイトを開設し、2006年に上場。2017年から自社での料理宅配を開始した。LINE(現LINEヤフー)からは2度の出資を受け、現在の出資比率は35%に上る。
コロナ禍後の消耗戦に挑む
コロナ禍で注目されたフードデリバリー市場だが、新規参入が相次ぎ、コロナ禍が去った後は消耗戦に突入している。矢野社長は市場自体は依然として魅力的だとし、日本ではコロナ禍でデリバリーを知ってもらう機会が増えたものの、同社は「本当にいいものを届ける体制が整っていなかった」と振り返る。今回、品質が一定程度向上したため、再び市場拡大に乗り出す決断をした。
矢野社長はもともとLINE出身で、2020年のコロナ禍でデリバリー市場が先に立ち上がった後、外部環境の変化もあり、成長を犠牲にしてでもサービスの質を高めることを優先した。今回の「お店価格」戦略とCM展開は、その準備が整った証しだ。
デリバリー未経験者を取り込む
同社の調査によると、デリバリーを一度も使ったことがない人の割合は依然として高い。矢野社長は「まだデリバリーを一度も使ったことがないという割合が高いのは、やはり店よりも本体価格が高いところからきている」と分析し、価格バリアを取り除くことで新規顧客の獲得につなげたい考えだ。
今後の戦略について矢野社長は「デリバリーの日常化」を掲げ、顧客に「時間価値」を提供することで、新たな需要を創出する方針だ。同社は広告宣伝費も含めて積極投資を続け、市場での存在感を高める狙いである。



