福岡市の住宅街にあるパン屋「やおき」は、85歳の飯田ユリ子さんと68歳の飯田一徳さんが営む個人店だ。一般的に個人経営のパン屋では職人1人が1日に作るパンは300個前後が目安とされるが、「やおき」では2人で1日1000個以上を手作りし、販売まで行っている。
徹夜で18時間働く過酷な製法
一徳さんは前日の夜7時頃から仕込みを始め、夜通しパンを焼き続ける。朝5時の開店後はシュークリームとエクレアの製造に取りかかり、全て作り終えるのは昼2時頃だ。一方、ユリ子さんも深夜から総菜パンの具材を仕込む。コロッケやメンチカツを揚げ、ソーセージを焼き、タマゴサラダなどの調理をこなし、焼き上がったパンに挟み、一つひとつ袋詰めする。朝5時の開店後は店頭で接客しながら、客が途切れると奥の工房で作業を続け、できあがった商品を次々と店頭へ並べていく。
長年、定休は週1日だけで、2人の睡眠時間はわずか3~4時間だった。今年5月から体を労わり、火・木・土曜の週3日営業に絞ったが、徹夜で18時間以上働き続ける過酷さは変わらない。それでもユリ子さんは「全然疲れんとですよ」とパワフルだ。
午前中に完売する日も
都心から離れたのどかな住宅街にもかかわらず、午前10時すぎには350個のパンがほぼ売り切れることもある。シュークリームとエクレアも順次ショーケースに並ぶが、客が絶えず次々に売れていく。一徳さんは「日によって違いますが、パンは午前中になくなることも。シュークリームとエクレアは10時過ぎから店頭に出し始め、夕方までに全て売れることが多い」と説明する。シュークリーム30個、エクレア10個など、大量に予約する客も多い。
値上げはわずか2回、10円でも「申し訳ない」
1995年の移転以降、値上げはわずか2回だけ。シュークリームとエクレアも20円しか上げていない。一徳さんは「10円上げるだけでも20%の値上げになってしまい、お客さんに申し訳なくて……。自宅の1階でやっていますし、うちの子たちはもう独立したので、何とかやっていけますよ」と大らかに笑う。
タマゴが入った調理パン90円、ピザトースト110円、メンチカツ140円と総菜パンも格安だ。この価格を維持するため、2人は今も過酷な労働を続けている。



