阿波しじら織の清涼感、カジュアル商品で新需要 伝統の技を現代に
阿波しじら織の清涼感、カジュアル商品で新需要

うだるような暑さの中で、汗による不快感を和らげる伝統織物がある。徳島県で生産される「阿波しじら織」だ。特徴は「シボ」と呼ばれる生地の凹凸で、肌に接する面積が小さく、空気を通すことから清涼感を生む。

カジュアルな新商品で伝統の魅力を発信

生地を製造する「長尾織布」(徳島市)の工場に併設された店舗には、伝統のイメージとは異なるカジュアルな洋服が並ぶ。藍染めの糸で織られた半袖シャツは、鮮やかな青色のしま模様にベージュ色のココナツボタンがあしらわれ、軽やかな印象だ。

経営者の長尾伊太郎さんは「カジュアルなシャツですが、品質にはこだわっています。見た目も着心地も涼しいですよ」と話す。

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シボが生まれる偶然の発見

シボは縦糸と横糸の本数と組み合わせで生じる張力の差によって生まれ、仕上げに熱湯をくぐらせ乾燥させることで凹凸が際立つ。その起源は明治初期、ぬれた綿布を日光で乾かした際に表面に自然な縮みができたことに着想を得て、改良が重ねられたという。

徳島産の藍で染めた糸を使ったものは「阿波正藍しじら織」として国の伝統的工芸品に指定されている。反物として1950年代後半に全国に普及し、高度経済成長期に生産のピークを迎えたが、和装が日常着でなくなると需要が減った。現在、徳島市内で生地の製造や染色に携わる業者は、長尾織布を含めてわずか3社しかない。

新たな需要の開拓へ

先細りを懸念した長尾織布は以前から、取引先の要望をヒントに甚平や作務衣などの日常着も作ってきた。近年は、新需要の開拓や流行を意識した新商品の開発に力を入れている。

襟をつけてジャケット風に仕立てた法被はインバウンド向けに開発され、着やすいようにボタンとひもを付けた。新製品のワイドパンツは今風のゆったりとしたデザインで、ハンチング帽は猛暑の夏も涼しげにかぶれそうだ。

自社開発の衣類や藍染め体験などの売り上げは、コロナ禍前の2019年には全体の数%だったが、昨年は1割近くまで増えた。長尾さんは「伝統的な物産の魅力が再評価されていると感じています。今の生活に合った商品を作っていきたい」と語る。

他の産地でも見直される伝統織物

シボのある伝統織物は他の地域にもある。滋賀県高島市の綿織物「高島ちぢみ」は、横糸に撚りをかけて織り、シボを生み出す。近年、高島晒協業組合が企画したステテコやトランクスなどの肌着が注目されている。

同県の湖東地域で作られる麻織物「近江ちぢみ」は、明治期から夏を快適に過ごす着物や寝具などに使われてきた。現在は洋服も作られており、県麻織物工業協同組合が昨年発売したアロハシャツやワンピースは百貨店の催事で好評だという。

事務局長の田中由美子さんは「吸水、発散性に優れ、清潔さを保てる自然素材として見直されています」と話す。

高温多湿な日本の夏に最適

文化学園大教授(被服衛生学)の佐藤真理子さんによると、産地によって素材や技法は異なるが、凹凸のある構造は共通していて、空気を通すことで熱を発散し、吸った汗も蒸発しやすくする機能があるという。「高温多湿な環境に適しており、年々暑くなっている日本の夏を快適に過ごすために、ぜひ活用してほしいです」と話す。

伝統的な魅力を残しながら、手に取りやすいデザインに工夫された商品も増えている。佐藤さんは「着こなしを自由に楽しむ今の時代にも合っています。気軽に身につけてほしいです」と勧める。

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