スティーブン・スピルバーグ監督の新作「ディスクロージャー・デイ」が、TOHOシネマズ日比谷などで公開中だ。監督の過去作「未知との遭遇」(1977年)を想起させる作品である。宇宙から来た生命体に導かれる人々の前に、秘密を守ろうとする組織が立ちはだかるという基本的な物語の構図は、ほぼ同じとみていい。しかし、なぜか「未知との遭遇」ほどの感銘はない。
物語の構図と逃亡劇
地球外生命体に関する機密情報が組織に保護されているが、ケルナー博士(ジョシュ・オコナー)は情報を世界中に開示しようとする。一方、テレビ局の気象キャスター、マーガレット(エミリー・ブラント)に異変が生じる。秘密を握るケルナーとマーガレットは、追っ手から逃げ回る。
それぞれの逃亡劇が並行して描かれる。組織のリーダー、スキャンロン(コリン・ファース)の描き方はもう少しすっきりできなかったかと思うが、用意された見せ場はスリリングで、さすがスピルバーグと思わせる。
アクションの見せ場
やがてケルナーとマーガレットはタッグを組むが、2人が乗った車と列車のアクションは全編の白眉だ。実写と視覚効果、俳優とスタントマンの演技を組み合わせ、スピードも重量感もたっぷりで、スピルバーグが監督したテレビ映画「激突!」や「マイノリティ・リポート」などの秀逸なアクション場面に匹敵する。
最終盤の展開と「未知との遭遇」との比較
前作「フェイブルマンズ」には、スピルバーグ自身を投影した少年が、初めて見た映画「地上最大のショウ」の列車の衝突場面に驚く挿話があった。少年は玩具を使って映画の場面を再現し、自ら8ミリカメラで撮影した。それをスピルバーグは再び大スクリーンで見せた。
そんなふうに本作を楽しんで見ていた記者は、最終盤の展開にあぜんとした。国家的な陰謀の中身が明かされるが、情報がはんらんし、フェイクニュースがあふれている今、この展開を納得させるには、相当な演出力が必要である。もちろん、スピルバーグであれば十分可能だったはずなのに、そうなっていない。
本作を見た後、「未知との遭遇」を約半世紀ぶりに再見した。光に包まれたUFO(未確認飛行物体)を仰ぎ見る人々、光の中から現れる宇宙人。現在、米国で真剣に議論されていると言われる未確認異常現象を信じようが信じまいが、目の前の映像を信じることができた。目もくらむようなまばゆい光、これこそ映画だと、有無を言わせぬ力をもった光が、そこにあったからだ。この光を「ディスクロージャー・デイ」でも見たかった。
「ディスクロージャー・デイ」(米)は、TOHOシネマズ日比谷などで公開中。上映時間は2時間25分。