日本の伝統芸能の一つである詩吟が、静かに衰退の一途をたどっている。コロナ禍の影響もあり、ある教室では会員が80人から40人に半減した。そんな中、旦早流吟詠会(たんそうりゅうぎんえいかい)の二代宗家・有坂旦悠さんと、宗嗣兼理事長の島田旦桜さんは、「伝統のエンタメ化」を合言葉に、詩吟の再興に挑んでいる。
詩吟とは何か?その歴史と誤解
詩吟は、漢詩や和歌などの詩に節をつけて声で表現する日本の伝統芸能である。公益社団法人日本詩吟学院によれば、詩に込められた作者の思いをくみ取り、力強く、あるいは伸びやかに表現する芸能だ。
しかし、特に若い世代の間では、詩吟と聞いてお笑いコンビ・天津の木村卓寛さんの「エロ詩吟」を連想する人が多い。島田さんも「『詩吟』と聞くと、『ああ、エロ詩吟ね』と言われることは本当に多いんです」と苦笑する。
詩吟の黄金時代と衰退の始まり
詩吟は平安時代に貴族の嗜みとして始まり、幕末には志士たちが漢詩を吟じて士気を鼓舞した。戦後、高度経済成長期には趣味として爆発的に普及し、最盛期には数百万人の愛好家がいたとされる。
しかし、現代では娯楽の多様化や高齢化により、詩吟人口は減少の一途をたどる。2026年現在、詩吟業界はかつてのような活気を取り戻せずにいる。
コロナ禍で会員半減、教室経営の現実
有坂さんと島田さんが運営する詩吟教室も、コロナ禍で大きな打撃を受けた。会員数は80人から40人に半減。教室の運営は厳しさを増し、「伝統を守るだけでは食べていけない」と島田さんは語る。
この状況を打開するため、教室ではさまざまな工夫を凝らしている。例えば、インテリアコーディネーターの資格を持つ島田さんは、詩吟教室とインテリアコーディネーターの二刀流で生計を立てている。また、目黒区の高校で普及活動を行い、若い世代に詩吟に触れる機会を提供している。
「伝統のエンタメ化」で再起を目指す
有坂さんと島田さんが掲げるのは「伝統のエンタメ化」というコンセプトだ。詩吟を堅苦しいものではなく、現代のエンターテインメントとして楽しんでもらえるように工夫している。例えば、詩吟のパフォーマンスに照明や音響を活用し、視覚的にも楽しめる演出を取り入れている。
また、SNSを活用した情報発信にも力を入れ、詩吟の魅力を広く伝えている。島田さんは「詩吟は決して古臭いものではなく、心を揺さぶる表現力を持っています。それを多くの人に知ってもらいたい」と話す。
詩吟の未来に向けて
詩吟の衰退は一部の教室だけの問題ではない。しかし、有坂さんと島田さんのような取り組みは、伝統芸能の新たな可能性を示している。エンタメ化によって詩吟が再び光を浴びることができるか、今後の活動が注目される。



