詩吟教室がコロナ禍で会員数を80人から40人に減らすなど、伝統芸能の衰退が深刻化している。しかし、一部の団体は「エンタメ化」を軸に再起を図ろうとしている。
詩吟の歴史とブームの背景
西郷隆盛や高杉晋作といった幕末志士たちは、詩吟を愛したことで知られる。詩吟は彼らが生きた時代に日本中に広がり、昭和40年ごろには国語学者・金田一春彦のアクセント研究が詩吟界に影響を与えた。それまで節回し中心だった吟詠に、日本語本来の言葉の高低や響きを重視する考えが取り入れられ、「詩の意味」を正しく伝える方向に発展。これにより日本中に詩吟ブームが起きたという。
当時は小学校で詩吟を習うことも一般的で、現在の90~100歳のシニア世代は自然に吟じられるという。しかし、学校教育から詩吟が姿を消すにつれ、ブームは陰りを見せ、今では大半の人が一度も触れたことのないマイナーな伝統芸能となった。
コロナ禍によるさらなる打撃
コロナ禍は詩吟教室に大きな打撃を与えた。ある教室では会員が80人から40人に半減。対面での指導が難しくなり、高齢の会員が多くを占める詩吟界では、感染リスクを恐れて教室を離れる人が相次いだ。さらに、新たな会員獲得も難航し、衰退に拍車がかかっている。
「エンタメ化」による再起の試み
こうした状況の中、旦早流吟詠会は「詩吟に触れる機会を増やしたい」と、普及活動に力を入れている。同会の代表は「詩吟の良いところは、年齢に関係なく楽しめることです。声さえあればでき、高額なテキストや道具も必要ありません。こうした利点を活かし、目黒区の八雲学園高等学校で講演会を行っています」と語る。
さらに、若年層を取り込むため、詩吟を「エンタメ化」する試みも始まっている。従来の堅苦しいイメージを払拭し、ポップスや現代詩とのコラボレーション、SNSを活用した発信など、新しい形の詩吟を模索している。
若年層の取り込みが課題
現在の詩吟人口の多くは高齢者で、若年層の参入が急務だ。学校教育で詩吟に触れる機会が減った世代にとって、詩吟は遠い存在になりつつある。しかし、若い頃に詩吟に触れる体験は、将来の詩吟人口増加につながると期待される。
旦早流吟詠会は、高校での講演会や体験会を通じて、若者に詩吟の魅力を伝えている。代表は「詩吟は日本の文化遺産。次の世代に継承するため、新しい形での普及が不可欠だ」と強調する。
衰退の一途をたどる伝統芸能だが、エンタメ化と普及活動によって再び息を吹き返すことができるのか。今後の取り組みが注目される。



