大倉琉人、初主演映画で変声期の少年役「自身と重なった」 釜山国際映画祭で撮影秘話
大倉琉人、初主演映画で変声期の少年役 釜山で撮影秘話

俳優の大倉琉人と隈本遼平監督が9日、韓国で開催中の「第31回釜山国際映画祭」(10月6日〜15日)で、映画『はじまりのさよなら』(11月20日公開)のワールドプレミア上映後のQ&Aに登壇した。映画初主演を務めた大倉は、撮影当時、自身も主人公と同じく変声期を迎えていたことや、母親役の板谷由夏との撮影エピソードを明かした。

音楽レーベル20周年記念作品

本作は、音楽レーベル・murffin discsの設立20周年を記念して製作されたオリジナル長編映画。音楽とともに育った少年・長沢樹太が、変声期をきっかけに自分の声や周囲との関係の変化に戸惑いながら、自分らしさを探していく姿を描く。

撮影は、広島県尾道市で敢行。テレビCMやミュージックビデオを手がけてきた映像ディレクターの隈本が長編映画の監督に初挑戦。SUPER BEAVERの柳沢亮太が映画音楽を初めて担当した。sumikaが主題歌を書き下ろした。

Q&Aで明かした撮影秘話

映画祭では、アジアのインディペンデント映画を対象とするコンペティション部門「VISION - ASIA(ビジョン・アジア)」に選出された。映画の殿堂で行われた世界初上映は満席となり、上映後には、登場人物の心情や細かな描写について観客から質問が寄せられた。

韓国語で自己紹介した大倉は、樹太の繊細な感情をどのように表現したかを問われ、撮影時の自身と役の状況に重なる部分があったと振り返った。演じる上では、相手によって異なる距離感を意識。父親との関係では距離を縮めることの難しさを感じるなど、登場人物それぞれとの関係を大切にしたという。

板谷由夏との共演、監督のこだわり

撮影中に印象に残っているエピソードとして挙げたのは、母・花江を演じる板谷との共演場面。物語の終盤に母親と歌うシーンだけでなく、その直前の親子の会話も強く記憶に残っていると語った。板谷は撮影前、せりふの一部やニュアンスを少しずつ変えながら、大倉の感情がどう動くかを探ってくれたという。大倉は、そうしたやり取りを通じて役や場面を作り上げていく過程が、貴重な経験になったと振り返った。

一方、隈本監督には、樹太がいつも同じ場所に靴をそろえる描写について質問が寄せられた。監督によると、目の見えない親のために靴を同じ位置に置くという設定が出発点だったが、撮影を重ねる中で、樹太自身の繊細さや几帳面な性格も表す描写になっていったという。

監督のベストカットと完成作への思い

母親と暮らす場所と父親の家で、花の様子が異なる点に着目した観客も。隈本監督は、花そのものに明確な意味を設定していたわけではないとしつつ、母親と暮らす家や街並みと、父親のいる場所の風景を対比させたいという思いがあったと説明した。人物像についても、最初から固定しすぎず、俳優との対話や撮影中に生まれる変化を大切にしていたと語った。

「監督が選ぶベストカットは?」という問いには、海辺を見つめる場面を挙げた。撮影では、俳優がカメラの回り始めやカットのタイミングを意識しすぎないよう心がけたという。そこで樹太が口にする景色の美しさも、撮影後に見返すと、風景だけにとどまらない意味が感じられたと振り返り、撮影を通じた発見が自身の喜びにもつながったと明かした。

大倉が完成作を鑑賞するのは、今回が2度目。改めて観たことで、水の流れる音などの細やかな表現にも気づいたといい、思春期特有の複雑な感情を抱える樹太に、観客もそれぞれの思いを重ね、共感してもらえたらと呼びかけた。隈本監督も、作品を受け止めた観客と直接言葉を交わせたことへの感謝を伝えた。

6日の開幕イベントには、大倉、板谷、隈本監督、柳沢、プロデューサーの岡村康佑が参加。レッドカーペットでは、大倉、板谷、隈本監督、柳沢が黒を基調とした装いで写真撮影に応じ、観客に笑顔で手を振っていた。