「この店には、社長の道楽に付き合っている余裕はもうないんです」
「道楽だと?」
杉本社長が声を荒らげる。「無線機ってのはな、この店の特徴なんだよ。それを理解できないって言うのなら、俺はもう知らん」
杉本社長は、事務所に引っ込んでしまった。昇は一つ溜め息をついてから言った。
「阿岐本さん、すみません。こういうことになってしまいました」
ぶつかるのはしょっちゅう、でも全面対決は珍しい
阿岐本が尋ねた。「こうやってぶつかることは、よくあるんですか?」
それにこたえたのはおかみさんだった。「言い合いはしょっちゅうだけどね、今日みたいな全面対決は珍しいね」
無線機はこの店の聖域
「全面対決ですか」
「そりゃあそうだ。無線機は、いわばこの店の聖域だよ。触れちゃあいけない領域だったんだ」