第37回「高松宮殿下記念世界文化賞」建築部門の受賞者に選ばれた建築家ダニエル・リベスキンド氏(80)の受賞記念建築講演会が10月29日、鹿島KIビル(東京・赤坂)で開かれる。
講演会では、リベスキンド氏が約1時間、写真を基に自らの作品を解説し、建築、設計の真髄を語る。その後、司会の三宅理一氏(建築史家)との対談で講演内容を掘り下げる。
参加者を募集中で、参加申し込みは9月30日まで、世界文化賞のホームページで受け付けている。
「直角だけが角度ではない」独自の設計
リベスキンド氏の代表作には、『ベルリン・ユダヤ博物館』、ドイツ・ドレスデンの『連邦軍軍事史博物館』増築、米中枢同時テロで崩壊したニューヨークのワールド・トレード・センター跡地の再開発マスタープランなどがある。
「直角だけが角度ではない。それ以外に359度ある」と語るように、建物の形状はさまざまな角度で設計される一方、既存の歴史的な施設に鋭角の構造物を付け加えるという独特の設計が特徴。さらに、失われたビルの後を空虚な空間のまま残すことや、建物の内部にも記憶を残す空虚な空間を設けることでも注目される。
ベルリンは「ひらめきの源」
ドイツのベルリンで8日に行われた第37回受賞者の発表会見に出席したリベスキンド氏は、世界文化賞のクラウス=ディーター・レーマン国際顧問(ドイツ)と対談し、「ベルリンで仕事が本格的に始まった。インスピレーションの大きな源といえる街」と振り返り、都市としての特徴を「灰燼の中から立ち上がってきた姿にある」と語った。
リベスキンド氏は冷戦終結間際の1989年、『ベルリン・ユダヤ博物館』の設計をコンペで勝ち取った記憶を鮮明に覚えていた。「都市を一つにするのは、ベルリンに存在していたユダヤ文化。壁を壊すことを考えていると、間もなく壁が崩壊した」と回想し、壁の崩壊後、創造の可能性も一気に新しい世界へと開かれていく当時の感覚を語った。
リベスキンド氏は建築が人の心に働きかける力の存在を意識している。「建物の中に入り、何かを体験すると、建物は何かを語りかけてくる。過去から現在そして未来へと、知的な面だけでなく感情の面にも影響を与える」と指摘した。
「空虚な空間」に至った背景
リベスキンド氏は現在、ニューヨークに拠点を移しているが、ワールド・トレード・センターの跡地再開発のマスタープランでは、跡地を空虚な空間とし、そこにビルの記憶が残るという発想を貫いた。「再開発では、誰もが共有できるものとは何かという、民主主義の側面から答えを求めて格闘した。かつてあった建物の跡地を発展させていくのに、それが最もふさわしい方法だった」と、空虚な空間に至った背景を指摘した。
リベスキンド氏は10月27日、オークラ東京(東京・虎ノ門)で、世界文化賞の第37回受賞者と国際顧問による合同記者会見に出席。28日に、明治記念館(東京・元赤坂)での授賞式に臨み、メダルを授与される。



