片岡市蔵、急逝した弟・亀蔵の当たり役「らくだ」の馬太郎を初役で勤める「踏襲しつつ僕なりに考えてやろうと」
片岡市蔵、急逝した弟・亀蔵の当たり役「らくだ」の馬太郎を初役で勤める「踏襲しつつ僕なりに考えてやろうと」

「あいつなりに頑張っているなと思っていました。同座することは少なかったので、いなくなった感じがしないんです。別の劇場で出てるんだろうな……と」。目に涙をため、絞り出すように片岡市蔵は語った。

昨年11月、64歳で急逝した片岡亀蔵をしのんで、東京・東銀座の歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」(8月2~26日)で「らくだ」が上演される。3歳違いの弟で、ともにアクの強い脇役を得意とした亀蔵が随一の当たり役とした駱駝(らくだ)の馬太郎を、兄・市蔵が初めて勤める。

ゾンビ映画好きが研究を重ねた役

死んだ馬太郎の仲間の半次(松本幸四郎)と屑屋の久六(中村勘九郎)は、弔いの金や酒を調達しようと、馬太郎の亡きがらを背負って家主(坂東弥十郎)と女房(笹野高史)の家へ行く。馬太郎の背後から体を操り“カンカンノウ”を踊らせて脅かすという設定だ。

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恐る恐る馬太郎をおぶった久六の頬にヌッと顔を近づけたり、操られていたはずなのに最後には自分から踊り出したり。無類のゾンビ映画好きだった亀蔵が研究を重ねてきた役でもある。市蔵は、馬太郎だけでなく「亀蔵十種」と呼ばれるほど強烈な役を次々に演じた弟について「自分の個性を分かっていて、前面に出してやっているな」と遠くから見守ってきた。

「一生、あいつがやると思っていました」

それだけに、馬太郎役の依頼が自分に来たのには驚いたという。「一生、あいつがやると思っていましたから。踏襲しつつ、僕なりに考えてやろうと思っています」

2008年の歌舞伎座では、中村勘三郎の久六、坂東三津五郎の半次、亀蔵の馬太郎、弥十郎の家主女房という顔合わせで上演され、市蔵は家主役で共演した。客席は爆笑の渦に包まれ、「毎日が生もので、その日によって芝居が全然違う。今日はどんな感じでくるんだろうな」と舞台の上で思っていた。予期せぬ出来事には家主として助け舟を出したこともあったが、今回の馬太郎は「僕、何もできないんで、されるがままです」と笑う。

研究対象は“体の色”

もっか、研究中なのは“体の色”だという。亀蔵は海外で入手した黄色の顔料を使うほどの徹底ぶりだったが、今は手に入れることができない。市蔵は絵の具の黄色や緑、水溶きの墨などを混ぜ、肌にのせて照明の当たり方も見ながら実験を重ねている。

「生きている人の中でベストで」

古希まであと2年あまり。敵役から老け役まで幅広く演じた市川団蔵、そして弟の亀蔵が世を去った今、歌舞伎に必要な脇役を担うベテランとして存在感は高まっている。「やったことのない役をやることもあるだろうが、また勉強していく。やる限りは、生きている人の中でベストでやりたいですから。何でも挑戦したい。尻つぼみになっちゃうの、嫌でしょ」

(電)0570・000・489。

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