梶裕貴、新作アニメ「サイボーグ009 ネメシス」で島村ジョー役「正義への問いかけ」
梶裕貴、新作「009 ネメシス」で島村ジョー役「正義への問いかけ」

石ノ森章太郎さん原作の名作漫画を基にした新作アニメ「サイボーグ009 ネメシス」が、Prime Videoなどで配信されています。作中、おなじみのサイボーグたちの前には、同じサイボーグなのに異なる正義感をもつ9人が立ちはだかり、超人的な能力を駆使したバトルを繰り広げます。島村ジョーの声を演じた声優の梶裕貴さんに、令和の「009」の印象や自身の活動について語ってもらいました。

9対9の構図は映し鏡のよう

009・島村ジョー率いるサイボーグたちは世界の平和を陰から支えてきた。彼ら「ゼロゼロナンバー」の前に、それ以上の力を持つN009・グラビトンら「ネメシスナンバー」サイボーグたちが現れます。元特殊部隊員のグラビトンは戦地で重傷を負って以来、「悪を完全に滅ぼすこと」を目的に生きてきました。「正義のためには犠牲は避けられない」という考えの彼らと、人命を守りたいジョーらとの壮絶なバトルが始まります。

梶さんは「9対9の構図は、映し鏡のようでもある。バトルものとしてはもちろん、哲学的な面白さも感じます」と語ります。原作「サイボーグ009」は1964年から石ノ森章太郎さんにより少年雑誌に連載され、ある組織に体を改造され、それぞれ異なる能力をもつ9人のサイボーグ戦士たちが世界平和のために戦う物語です。島村ジョーは、奥歯の脇に仕込まれた加速装置を使って音速で行動できる能力があります。

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悪を倒したいという気持ちはネメシスナンバーも同じですが、自らを「必要悪」と認める彼らは、自分たちの考える正義のためなら人を死なせることもいといません。重力を操るネメシスナンバー「N009」のグラビトンは、ジョーたちの正義を「甘い」と否定し、その圧倒的な能力でねじ伏せにかかります。梶さんは「ネメシスも、彼らなりの正義のもとに行動している。目指す理想は、理解できる部分もあり、今作の見所でもあると思います」と話します。

人間の根本的な部分を描く

「サイボーグ009」は60年代から現在に至るまで何度も映像化されてきました。梶さんは「誰もが知る名作。とても光栄で、責任ある仕事です」とジョー役の覚悟を明かします。片方の目が隠れる髪形で陰を感じさせるジョーについて、「正義感が強くて心優しく、多くの人を救いたがっている。優しいが故に、自分のあり方に苦悩する瞬間もある」と分析します。

ジョーは母が日本人、父が国籍不明の外国人で、差別を受けて育った過去があることから、梶さんは「今、アニメ化される意義を強く感じます」とも話します。石ノ森作品の魅力について、「正義への問いかけです」と力を込めます。「正義の形は様々だし、純粋な悪というのもなかなかない。キャラクターがそれぞれ抱える『個』に悩み、葛藤し、やがて彼らが出会って互いの価値観に触れ、個や相手を認めるというドラマがある。人間の根本的な部分を描いてくださっていると思います」と語ります。

AIと新たな表現を

梶さんは自身の声を生成AIに学習させた音声合成ソフト「梵そよぎ」を商品化するなど、2023年から声をテクノロジーとつなげる活動を続けています。「AIと向き合うことは、人間と向き合うことだと感じています。本作にも含まれている『機械か、人間か』という問いかけにも共通していると思います」と話します。

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無断で声をAIに学習させる「無断生成AI」動画が問題になる中、梶さんの活動は表現者としての熱意が先行したものです。「無断生成AIの被害者でもある僕がアクションを起こすことにも、意味がある。僕が体感しているものを決してないがしろにせず、かつ誰もが嫌な思いをしないためには、当事者が主導する必要があると考えています」と語ります。

AIとの向き合い方については「AIはあくまで、テクノロジーです。尊厳やモラルを持って向き合うことが何より重要で、そこが大切にされるならば、共存可能だと思っています」と述べます。今後の活動については「いま40歳で、家庭には妻と娘もいます。自分に純粋に使える時間を逆算してみると、なかなか足りない。声優業は変わらず全力でやり続けますし、家族との時間を大切にする。そして『梵そよぎ』など、声を使った新しい活動も継続していく。その三つを軸にして、残りの人生を過ごすつもりです」と語りました。

今こそ伝えたい作品であり続ける

今年で「009」の連載開始から62年になります。「ネメシス」の製作を担当した石森プロのライセンス部長・及川美香さんは「新作をコンスタントに世に出していきたいと考えています。60年を経た『次の一歩』となる作品です」と語ります。シリーズの映像化が続く理由は「普遍性だと思います」と言い切り、「人がどこかで意識し続けていることが、キャラクターやメッセージに練り込まれていて、いつも『今こそ伝えたい』作品であり続けています」と話します。

ネメシスナンバーとの「9対9」の構想は企画立案の最初から決めていたそうです。及川さんは「迷うことは弱くて、迷わないことは強さなのか。ゼロゼロナンバーとネメシスナンバーは、本当に敵同士だろうか?ということにも、思いをはせて見てほしいです」と呼びかけます。島村ジョー役を梶さんに託した狙いは「ジョーは、勝負を制してもガッツポーズなどはしない。『王道のヒーロー』らしくないんです。キャラクターにそういう息吹を与えられるのは、やはり梶さん」と全幅の信頼を置いています。

見所については「サイボーグ同士の『9対9』のバトルが実現するなんて、ワクワクしませんか?」とキッパリ。「原作を読んだことがなく、過去の映像化作品を見たこともないという人たちも、シンプルに楽しめるはずです」と話しています。