「令和の就活」を描く漫画『今どきの若いモンは』吉谷光平インタビュー
「令和の就活」漫画『今どきの若いモンは』吉谷光平インタビュー

Cygamesが運営するマンガ配信サービス「サイコミ」で連載中の社会派お仕事コメディ『今どきの若いモンは』(著・吉谷光平)の新章「就職活動編」が、令和の就活の実態を描き話題を呼んでいる。同作は、大手商社・三ツ橋商事を舞台に、新卒社員からアラサーのエース社員へと成長した主人公・麦田が、今度はリクルーターとして新卒採用に携わる姿を描く。コミックス33巻からスタートしたこの章では、SNSやオンライン面接が当たり前となった現代の就活事情を、学生と企業の両視点からリアルに切り取る。

「普通になりたい」学生のリアルな本音

著者の吉谷光平氏は、本作の執筆にあたり、実際の就活生や企業の採用担当者への取材を重ねた。その中で印象的だったエピソードとして、ある学生から「吉谷さんは外れ値」と言われたことを挙げる。「その学生にとって、漫画家としてやりたいことをやっている僕は例外で、みんな普通(サラリーマン)になりたい、ということでした」と吉谷氏。現代の若者は情報が手に入りやすく「答えのようなもの」を持ちやすい反面、「どうせ失敗する」「挑戦が怖い」と感じる傾向があると分析する。

また、就活生の間では「MBTI(16タイプに分類する性格診断)」が自然に使われていることに驚いたという。「企業によっては面接シートに記入欄があるほど。自分の性格を知ることは大前提で、行動基準の一つになっています。ただ、逃げ場のない答えが何にでもついてしまうことに息苦しさも感じました」と語る。

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「30歳で年収1000万円」若者の焦燥感

「就職活動編」では、主人公・麦田の視点と並行して、大学3年生の就活生・佐藤リリカの物語も描かれる。リリカは「就活で人生を逆転したい」と強く願う若者で、その目標は「30代で年収1000万円」。吉谷氏は、現代の若者が抱える焦燥感について「選択肢が多すぎるがゆえに、自分をきれいに諦められない。失敗が怖い。自由という名の暴力にさらされている」と語る。

取材では「MARCHよりも下だったら絶望」といった声も聞かれ、自身の就活時代との違いに衝撃を受けたという。「僕は年収が高いと嬉しい程度の感覚だったが、今の学生は『1000万円稼がないと普通の生活が送れないのでは』という焦りを抱えている。SNSであこがれの世界が常に視界に入り、転職が自由になり、年収の話が溢れている。世界が数値化しているように感じます」と述べる。

世代間ギャップと「浦島太郎」状態の親世代

吉谷氏は、就活における世代間のギャップを描く上で、採用側と学生の重視点の違いを意識したという。「現場の社員からすれば、何のインターンをしたかはそこまで気にしないが、学生の間では『ここでインターンしなくては』という情報が流れている」。こうしたギャップは、採用側の麦田が驚く姿で表現されている。

また、就活は当事者でなくなるとブラックボックス化しやすく、親世代は「浦島太郎状態」だと指摘。「だからこそ、最新情報を持つ若い世代が情報商材を売って稼ぐこともできる。その構造は怖い反面、面白い」と語る。

「毒親」に見える母親の真意

最新34巻で注目してほしいシーンとして、吉谷氏はリリカの母親の表情を挙げる。「最初は毒親のように圧を感じる怖い顔かもしれませんが、シリーズを最後まで読むと見え方がひっくり返るように意図しました」。リリカの両親は共働きで、都内の狭小住宅で娘を懸命に育てる普通の親だという。「現代の親は『超えるべき壁』ではなくなってきている。うまくいっている分、『いい子でいなきゃ』という感情が強いのではないか」と分析する。

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「自分で選ぶ」ことがテーマ

吉谷氏は、就活編のテーマを「自分で選ぶ」ことだと語る。「答えはいつも自分の中にあります。それを信じて頑張ってほしい」。また、読者に対して「麦田とリリカが失敗しまくる姿を見て、『こんな形でもいいんだ』と安心してほしい」とメッセージを送る。

『今どきの若いモンは』は「サイコミ」にて毎週月曜更新で連載中。最新コミックス34巻も発売中で、累計発行部数は150万部を突破している。