音楽の授業で教師から「音痴なら歌うな」と言われた30歳の女性が、1200年の歴史を持つ伝統芸能・詩吟との出会いによって自信を取り戻した体験が話題となっている。詩吟は、漢詩を節をつけて吟じる日本の伝統芸能で、現在も60~80代を中心に愛好者が多い。
詩吟の世界に足を踏み入れて
筆者は、旦早流吟詠会の宗嗣兼理事長を務める島田旦桜さんの指導のもと、詩吟のレッスンを受けた。詩吟は吟じる前にまず題名と作者を読み上げ、決められた音や長さをいかに美しく吟じるかにこだわり、一音一音発声していく。筆者にとって漢詩は初見だったが、日常で漢詩に触れる機会がほとんどないため、非常に新鮮で面白い体験だった。特に「音」で漢詩を聞けることが贅沢であり、日々の忙しさを忘れるひとときとなった。
失敗を笑わない教室の雰囲気
レッスンでは、参加者それぞれが順番に立ち上がって吟じる。筆者は徳富蘇峰の「京都東山」を吟じた。この漢詩は、徳富蘇峰が京都の霊山を訪れ、坂本龍馬や中岡慎太郎ら志士の墓でその死を弔った内容だ。教室の中で立ち上がり、プリントを見ながら吟じるうちに、どこか「音楽の授業」を思い出させる感覚があった。
しかし、筆者は過去に音楽教師から「歌うな」と言われたほどの音痴であり、最初は自信が持てず声が小さかった。しかし、この教室には「音痴は歌うな」と言う人はいない。少しずつ声が大きくなり、伸びやかになっていく。失敗してもバカにされることはなく、むしろ温かい雰囲気の中で練習できる。半分ほど吟じ終えたころには、教室中に自分の声が響いていた。
指導者からの評価
島田さんは筆者に対して、「もうできてますね。注意しようと思っても、スラスラできているので指摘する点もありません」と評価した。この言葉が、筆者の自信をさらに高めた。
詩吟の魅力と継承
詩吟は1200年以上の歴史を持ち、現在も多くの人々に愛され続けている。特に60~80代の高齢者が熱中する理由として、心身の健康維持や仲間との交流が挙げられる。また、漢詩の教養を深める機会としても価値が高い。詩吟教室では、年齢や経験に関係なく誰でも参加でき、音痴だからといって遠慮する必要はない。このような環境が、伝統芸能の継承において重要な役割を果たしている。
筆者の体験は、詩吟が単なる趣味ではなく、自己肯定感を高める手段にもなり得ることを示している。音痴に悩む人々にとって、詩吟は新たな可能性を開くかもしれない。



