小樽市港町の小樽芸術村「浮世絵美術館」で公開されている江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎(1760~1849年)の肉筆画「雪中美人図」が人気を呼んでいる。北斎作品としては最高額の6億2100万円で落札されたという話題性もさることながら、精密な修理によってよみがえった絵そのものの美しさが最大の魅力だ。
200年以上の時を経て修理へ
1813~19年頃に制作されたとされる作品は、200年以上の時を経て、絵の具の剥離や汚れなどがみられた。一般公開するには修理が必要で、文化財修理を数多く手がける「経新堂 稲崎」(東京)の表具師・稲崎昌仁さんに依頼した。
肉筆画は、表から本紙(絹本)、肌裏紙(1層目の裏打ち紙)、増裏紙(2層目の裏打ち紙)の3層構造になっている。今回の修理では、ミリ単位の薄さの本紙を傷つけずに、経年劣化で黄ばんでいた肌裏紙を取り除き、新しい美濃和紙に打ち替えた。これにより、作品全体が明るくなり、コントラストも鮮やかになった。
修理で判明した「裏彩色」の工夫
修理の過程で、本紙の裏側からも彩色されていたことが確認された。両面から彩色するのは、奥行きのある発色や透き通るような質感を演出するための「裏彩色」という技法。表と裏で同じ色を塗るのが普通だが、本作では、表で傘の黒い部分が裏ではえんじ色に塗られており、絵師の工夫が隠されていたことも判明した。
本作は、戦前、大阪・北浜の相場師として活躍し、「福田将軍」の異名をとった福田政之助の旧蔵品。1938年の「東洋美術大博覧会」(大阪市立美術館)や、2005年の「北斎展」(東京国立博物館)などで公開されたことがある。
毎年1回の公開目指す
小樽芸術村の田中健館長は「今回の修理であと50年、100年はもつ。常設はできないが、毎年1回は公開していきたい」と話す。
同時開催されている企画展「名品撰」には、本作を含めた北斎の肉筆画6点など、喜多川歌麿、歌川広重、東洲斎写楽、歌川国芳らの作品計84点が展示されている。同展は30日まで。問い合わせは小樽芸術村(0134・31・1033)へ。



