文楽人形遣い・吉田一輔、師の当たり役お三輪を継承「人形の魅力感じて」
文楽・吉田一輔、師の当たり役お三輪を継承

文楽人形遣いの吉田一輔(よしだ・いちすけ)さんが、今夏、主演した三谷文楽「人形ぎらい」を京都で上演し、秋には大阪・国立文楽劇場の「三代吉田簑助三回忌追善 錦秋文楽公演」で、師・吉田簑助さんの当たり役だった「妹背山婦女庭訓」のお三輪を継承する。一輔さんは「新作でも古典でもぜひ、文楽と文楽人形の魅力を感じていただきたい」と笑顔を見せる。

三谷幸喜との13年ぶりの新作

一輔さんは文楽人形遣いの家の3代目に生まれ、父の桐竹一暢さんに入門。父亡き後、平成16年から人間国宝で女方の第一人者だった三代簑助さんに自ら願い出て弟子になった。現在は女方を中心に、大阪文化祭賞を受賞するなど存在感が光る。

そんな中、現代演劇の第一人者である三谷幸喜さんと出会った。平成24年、三谷さんが文楽に書き下ろした三谷文楽「其礼成心中(それなりしんじゅう)」に主演し、文楽を見たことのない人たちも劇場に押し寄せ、大きな反響を呼んだ。「人形ぎらい」はそれ以来、13年ぶりの三谷さんの新作となる。主演、監修を一輔さんが務め、昨年、東京のPARCO劇場で初演、関西での上演は初めてとなる。

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文楽人形の可能性を追求

一輔さんは「ずっと第2弾をやらせていただきたいと思っていたので、実現できたことがうれしかった。三谷さんの人形愛、文楽愛があふれている作品だと思う」と話す。主人公は脇役専門の文楽人形・陀羅助(だらすけ)。二枚目の主人公の引き立て役ばかり演じさせられていることに不満が爆発し、劇場を飛び出す。近松門左衛門の「鑓の権三重帷子(やりのごんざかさねかたびら)」を劇中劇に、文楽人形たちの悲喜こもごものドラマから、どんな役も大切で、悪い役などないという三谷さんの思いも浮かび上がる。

劇中では、文楽人形がスケートボードに乗ったり、人形遣いの手を離れて「人格」をもったりと、普段の公演では考えられない場面も。「1作目で三谷さんとの信頼関係ができ上がっているので、お互い文楽人形でどこまで何がやれるのか、話し合いながら作っていけた。基本、文楽人形でできないことはないんじゃないかな。文楽人形の可能性を追求できたことも、うれしかったですね」と語る。

師の当たり役への継承

一方、「三代吉田簑助三回忌追善」公演では、「心中宵庚申(よいごうしん)」「妹背山婦女庭訓」「本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)」という簑助さんの当たり役ばかりが3演目上演される中、一輔さんは「妹背山―」のお三輪を勤める。「師匠のお三輪に憧れていました。首のちょっとした角度、優しい手の動き…あんなにかわいいお三輪は見たことがないですね。人形が師匠に乗り移っているようでした」と振り返る。

「妹背山婦女庭訓」は、古代日本を揺るがした乙巳の変を背景に、身分違いの若者に恋したことから政争に巻き込まれてしまう娘・お三輪の純愛と悲劇を描く。一輔さんは「師匠のまねをしようと思ってもできないのは分かっていますが、それでも追求していきたい。師匠から『しっかりやっていけよ』というエールをいただいたようです」と意気込みを語った。

三谷文楽「人形ぎらい」は8月21~26日、京都市下京区の京都劇場で上演。チケットはキョードーインフォメーション(0570-200-888)で取り扱う。「三代吉田簑助三回忌追善 錦秋文楽公演」は10月31日~11月23日、大阪市中央区の国立文楽劇場で開催。問い合わせは国立劇場チケットセンター(0570-07-9900)へ。

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