日傘にハンディファン、ネッククーラーに冷却ミスト――暑さが増すほどに「涼しくなりたい」というニーズに応えるアイテムも増えている。まさに“冷感グッズ戦国時代”と呼ばれる状況だ。その中で求められているのは、暑さや不快感を「マイナス→ゼロ」に戻すだけではない。その先にある“プラス”とは何か。美容アイテムから冷感グッズまで幅広く展開するBCLカンパニーの古場さんに、リアルなトレンドと今後の可能性を聞いた。
「暑いから冷やす」から「この瞬間を快適に」へ
日本でも40度を超える気温が観測されるなど、異常気象が日常になりつつある。以前のように夏を四季の一つとして楽しむだけでなく、暑さへの向き合い方を「健康を守るためのリスク管理」と捉える人も増えている。「過酷な暑さやストレスから逃れ、日常の心地よさを得る“前向きなセルフマネジメント”という視点が、昨今の暑さ対策には見られるようになってきた」と古場さんは語る。
この視点が反映されているのが、冷感グッズの使用シーンの細分化だ。朝のメイク、外出、家の中、お風呂上がりなど、シーンごとの不快感に合わせて暑さ対策を使い分けるようになっている。例えば、化粧ノリを良くするためにメイク前の肌温度を整えることや、お風呂上がりのドライヤー時間を短縮するために速乾アイテムを取り入れることだ。暑さ対策は、単に「暑いから冷やす」というものではなく、日常のさまざまな場面にある不快感を取り除くためのものへと広がっている。
「今はみなさんとても器用にハンディファンや日傘を使い分けていますよね。この前、涼しい室内から屋外に出た瞬間、リュックに付いているぬいぐるみ(ストラップ)から、日傘をスムーズに取り出している方を見かけました。何気ない日常の一コマからも、暑さ対策のグッズをスマートに使い分けている現代生活者のリアルな姿が浮かび上がってきます」
「冷やした先の機能性」と情緒的価値が鍵
暑さによる不快感を取り除くだけなら、いわば“マイナス→ゼロ”の状態。そこから、「肌を綺麗に魅せて引き締める」「サラサラ感をキープする」「化粧ノリを良くする」といった+αの機能性が加われば、“ゼロ→プラス”へと価値が広がっていく。「冷やした先の機能性を伝えられるかどうかが、非常に大事なんです」と古場さんは話す。さらに、美容メーカーならではの付加価値として挙げられるのが、五感に働きかける「情緒的価値」だ。機能性だけでなく、使ったときのワクワク感や、心が軽くなるような癒やしの香りなど、機能のその先に感じられるものにも注力しなければならないという。
“冷感グッズ戦国時代”で生き残るため、機能面・情緒面など様々な工夫が凝らされるようになったアイテムたち。男性の愛用者も徐々に増え、性別を超えた冷感ニーズも高まってきている。冷感対策そのものが、特定の性別に向けたものではなく、誰もが日常的に取り入れるセルフマネジメントへと変化していることも、現在の冷感市場を考えるうえで見逃せないポイントだ。
タイの知恵と成分重視、海を越える日本品質
単なる暑さ対策だけで終わらないため、美容メーカーだからこそ着目しているのが、“寒暖差によって生まれる肌悩み”だ。猛暑の外気とエアコンの効いた室内を行き来する夏――外では汗やベタつきが気になるのに、室内では乾燥する。こうした環境変化によって、肌のバリア機能が低下することもあるという。いわゆる“インナードライ”と呼ばれるこの状態では、刺激的な冷感ではなく、肌をすこやかに保つためのケアが求められるようになっている。
同社は今年の夏、従来の商品や海外発のアイテムを現代のライフスタイルにフィットさせる新しい提案で注目を集めた。高温多湿のタイで“肌をさらさらに保つ”として活用されてきたタルカムパウダーを日本仕様にして発売したのだ。近年、汗や皮脂による肌トラブルや不快感がさらに深刻な悩みとなっているが、パウダーの活用により湿度によるベタつきを抑えながら、汗も防ぐことができる。パウダーならではの使いやすさや、持ち歩きたくなるデザインといった付加価値も加わり、SNSでは「パウダーで使いやすい」「見た目が可愛く、イベントやフェスに持って行きたい」といった、機能面・情緒面の双方からの反応が見られたという。
「日本でも、江戸時代からある『てんかふん』は、暑さを回避する工夫として親しまれてきました。長く続いてきた手法は、それだけ価値があるから今もなお残っているということだと思っています。古くから知恵として語り継がれてきたことも、現代のライフスタイルに合うようアップデートして伝えることを意識しています。ユニセックスなデザインかつ、軽量で携帯しやすいため、ゴルフのシーンで利用するなど男性からも支持を集めています」
もう一つ注目されている機能性は、スキンケア商品に含まれる「成分」だ。「SNSで注目度の高い成分や流行りの成分が可視化され、消費者の感度も高まってきました。パッケージの成分表を読んで、購入の判断をされる方もいらっしゃいます。香りなどの情緒的価値と併せて、成分の需要にも寄り添う必要があると思っています。BHAやアラントインなど、肌悩みに対応する成分を必ず入れているのは、化粧品メーカーが出す冷感グッズだからこその強みだと考えています」
“冷感グッズ戦国時代”だからこそ、日本で生まれる冷感グッズは海外からの反響も大きいようだ。なかでも『サボリーノ』は、国内外を問わず支持を集めているという。「朝用のシートマスクは、保湿下地の機能も含んでいます。それが世界から見ても珍しいみたいですね。加えて、蓋の閉めやすさやシートの取りやすさなど設計も細やか。手に取りやすいと聞きます」
日本製品の強みとして挙げられる「使い勝手の良さ」や「配慮の行き届いた設計」は、海外ユーザーからも高く評価されている。「“細やかさ”は日本品質の強い武器でしょうだと考えます。日本人にとっての当たり前が、海外の人にとって新鮮さや感動に繋がっていることがあります。日本の消費者にどう思われるか?という視点を大切にすれば、時には海外でも評価されるものへつながっていることがあると思います。また、海外の商品から着想を得る際も、日本の消費者がどう感じるかを考えながら、応用していきたいですね。世界中で気温が上昇する中、日本の冷感グッズは大いにポテンシャルを秘めているので、これからもグローバル展開を見据えつつ、日本ならではの“細やかな冷感美容体験”を提案していきたいです」
暑さを一時的にしのぐだけではなく、使いやすさや美容効果、香りによる心地よさまで含めて、日々をすこやかに過ごすための選択肢を増やしていく。冷感グッズは、単に暑さを和らげるためのアイテムから、心身をすこやかに保つ「ウェルネス」を支える存在へと広がりつつある。残暑が長引き、暑さの記録が更新され続ける今、冷感グッズはこれからどこまで進化していくのか。日本ならではの細やかな発想と美容の知見が、世界の暑さ対策をどう変えていくのかにも注目したい。



