戦国武将の宇喜多直家と秀家の父子をNHK大河ドラマの主人公に――。そんな誘致活動が岡山で進んでいる。商店街のアーケードには、機運醸成を図る横断幕が掲げられた。
悪役イメージの払拭も狙う
50万石の大名となり、城下町・岡山の礎を築いた直家。秀家は五大老の一人として豊臣家を支え、朝鮮出兵の指揮も執った。
それなのに、軍記物やドラマでは、直家が謀略を駆使したり、関ヶ原で敗れた秀家が島流しになったりした部分がクローズアップされがちで、悪役として描かれることもある。誘致の狙いは、観光振興に加え、レッテルの払拭にもあるようだ。
歴史研究家「あり得る話」
「あり得る話です」。そう言い切るのは、地域史に詳しい歴史研究家の内池英樹・県立博物館副館長(54)。古文書を読み解いて適切に分析できる人材は限られており、全国の武将に関する膨大な史料は今なお研究が追いついていないから、というのが根拠だ。
別の専門家も同調する。江戸期になって書かれた軍記物は、史実としての正確さは二の次で、面白さやドラマチックさが優先されることもあった。創作が入り交じり、悪役の名を背負わされた武将もいる、ということらしい。
研究進展の可能性
新事実の解明には、研究者が増えることが第一歩。「宇喜多家への関心が高まれば、研究が進むことにつながる」。大河誘致の成否以上に、活動にはそれだけの価値があると内池副館長は説く。
かつて「いいくにつくろう鎌倉幕府」は、歴史学習の語呂合わせの代表格だった。しかし、鎌倉幕府の創設年は諸説が浮上。最近の教科書では1192年と明記されていない。これも研究が進んだ成果だという。
直家と秀家の生涯に、新たなスポットライトが当たるのか。見逃せないドラマだ。
研究者の登場を期待
「小さな事実を積み上げることで、だんだん輪郭が見えてくるのが面白い」。内池副館長は、歴史研究の醍醐味をそう語る。その言葉は、自身の経験に裏打ちされている。
林原美術館(岡山市)で見つかった「本能寺の変」に関わる古文書の解読だった。長宗我部家の四国統治を巡り、明智光秀は織田信長との間を取り持ったが、主君はいったん決まった方針を一方的に破棄。光秀の面目が丸潰れとなったことが、歴史的事変の引き金となった――。2014年に発表した解読内容により、その説が強まった。
元々は小学校教員だった内池副館長が解読チームに加わったのは、県立博物館学芸課への異動から間もなくのことだった。「今後も研究を通じて『まだこんなに面白い話がある』と伝えていきたい」と意気込む。
ロマンに満ちた歴史研究の世界。「敵は固定観念にあり」。宇喜多家の新事実も、そんな気概で浮き彫りにするような研究者が現れてほしい。



