風を受けると「チリン」と鳴る置き型風鈴、室内で涼を楽しむ新提案
風を受けると「チリン」と鳴る置き型風鈴、室内で涼を

風を受けると、手のひらサイズの真ちゅうの球体が起き上がりこぼしのように揺れ、球体の中の玉が転がり「チリン」と涼しげな音が響く。うちわであおいでも涼しげな音が楽しめる置き型風鈴。富山県高岡市の伝統工芸・高岡銅器を製造してきた小泉製作所が2016年から販売している。

斬新な形と室内での楽しみ方

一般的な風鈴とは上下が逆さまの斬新な形が目を引く。風が吹き込む窓際に置いてもよいが、窓を閉めてエアコンを利かせている今の時期なら、風量を強めに設定して風を当てると音が鳴りやすい。うちわであおいだり、指でつついたりして鳴らしてもよい。

開発担当の前田紗希さんは、自宅のテレビ台と会社のデスクに置いている。「静けさの中でたまに音を鳴らすと、頭の中がリセットされて癒やされます」と話す。

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伝統工芸の技術を生かした新たな挑戦

同社は1889年(明治22年)に創業し、仏具や美術工芸品を手がけてきた。だが、住宅環境の変化で仏壇を持たない人が増え、仏具の売上高は落ち込むばかり。4代目の小泉俊博さんが活路を見いだしたのが、風鈴やドアベルなどの「音響クラフト」だった。

小泉さんは大学で振動工学を専攻。金属が音を発する仕組みなどを学び、その縁で、建築家アントニオ・ガウディが手がけた「グエル別邸」(スペイン)の鐘の修復に携わったこともある。「何げない日々の生活に彩りや癒やしを与える商品をつくりたい」と、置き型風鈴の開発に着手した。

試行錯誤を重ねて生まれた音

開発を任された前田さんは当時、入社半年の新入社員。小泉さんから新商品のイメージとして渡された一枚の紙には、仏具の「おりん」の上にキジの羽根がついたイラストが描かれていた。その通りに試作してみたが、うまく音が鳴らず、形や音の鳴る仕組みを何度も変えた。販売直後に「音が聞こえにくい」との意見が寄せられ、急きょ改良するトラブルも。音の周波数を測り、金属の厚みや切り込みの位置を細かく調整し、多くの人にとって心地よい音を求めた。

ラインナップと今後の展望

2016年に発売した置き型風鈴「YURARIN(ゆらりん)」は、細長い風受けを持つスタイリッシュな見た目で、テレビなどで紹介されると、全国から注文が寄せられた。23年には風受けが丸く、より小ぶりな「こゆら」、今年5月には、風受けにアロマオイルをつけて香りも楽しめるタイプも発売した。

小泉さんは「代々受け継いできた金属加工の技術を生かし、100年、200年と世紀をまたいで愛され続ける唯一無二の商品を作り続けたい」と話す。

風鈴の歴史と専門家の見解

音で感じる風のゆらぎ音が人の心理に与える影響を研究する金沢工業大建築学部教授の土田義郎さんは、40年ほど前から風鈴を収集し、コレクションは200個を超える。「風鈴は風の象徴で、音から風のゆらぎを感じ取ることができるので、涼しさを味わえます」と話す。

風鈴は中国から仏教とともに伝わり、寺院に魔よけとしてつるされた風鐸(ふうたく)が起源とされる。江戸時代には「風を感じる道具」として庶民に広がった。色鮮やかに彩色されたガラス製の「江戸風鈴」(東京)や鉄製の「南部風鈴」(岩手)、鉄の火箸(ひばし)がふれあって音が出る「明珍(みょうちん)火箸風鈴」(兵庫)など、材質や音色は様々だ。

土田さんは「実際に目で見て音を聞き比べ、好みのものを見つけるのがおすすめです」と話す。

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つり下げる場所がなければ、卓上に置ける専用のスタンドも販売されている。富山県の鋳物メーカー「能作」のスタンドはシンプルなデザインで風鈴の存在を引き立てる。人の出入りがある玄関に飾ると音が鳴りやすいという。

土田さんは「風鈴の音は雑念を振り払い、心を落ち着ける効果も期待できます」と話している。