水戸の常設寄席「みやぎん寄席」開設4年、若手落語家の高座で笑いの殿堂に
水戸の常設寄席「みやぎん寄席」開設4年、若手の高座で笑いの殿堂に

水戸市宮町の常設寄席「みやぎん寄席」が9月に開設4年を迎えた。若手落語家の高座を間近で楽しめる約40席の小さな寄席には、「推し活」感覚で通うファンも増えている。席亭の内藤学さん(66)は「みやぎん寄席を『笑いの殿堂』にしたい」と語る。

古典落語「やかん」に笑いの渦

「夫婦ってどうして夫婦って言うんですか」「子どもが風の子だから、親はフーフー」「カレイはどうしてカレイ」「華麗に泳いでくるから、華麗だ、カレイだ」

いつもバカにされている若者が、知ったかぶりの老人を困らせてやろうと、あれこれ名前の由来を尋ねる古典落語「やかん」。二ツ目の三遊亭兼矢さん(31)が赤い高座で、2人の滑稽なやりとりを軽妙に語ると、会場は笑いの渦に包まれた。

きっかけはコロナ禍の街おこし

酔客でにぎわう宮下銀座商店街の一角にたたずむみやぎん寄席は、全国でも珍しい常設寄席だ。訪れるのは、都内の寄席にも通う生粋の落語好きから初心者まで様々だ。

2022年9月にオープンしたみやぎん寄席は、内藤さんの「水戸を笑いあふれる街にしたい」という思いがきっかけだった。水戸ヤクルト販売社長で、水戸商工会議所会頭も務める内藤さんは、コロナ禍でにぎわいが失われた街を見て、大好きな落語での街おこしを思いついた。自身も社会人落語家として活動していたほどの落語好きで、水戸の落語イベントに参加した際は、約300席のホールが満席になったのを見て「水戸は落語好きが多い」との確信もあった。だが寄席開設後の経営は決して楽ではなく、「あの時は無料だったからかなぁ」と笑う。

若手の「推し」を応援する感覚で

22年4月には友人らと、寄席運営を担う一般社団法人を設立。費用も仲間で出し合い、宮下銀座商店街にあった倉庫の改修を始めた。浅草や上野の寄席は、近くに神社仏閣があり、水戸東照宮の近くというのも気に入った。

約40席の寄席は、真打ち・古今亭菊之丞さんが内装を監修した。一番後ろの席からでも、落語家の手元の動きがよく見える高さになっている。内藤さんの弟で都内の寄席にも足しげく通う実さん(62)は、みやぎん寄席の大ファン。「小さい寄席だから落語家の表情や動きがよく見える。若手の『推し』を応援する感覚で通える」とご満悦だ。

江戸落語では落語家は前座、二ツ目、真打ちの順に昇進するが、みやぎん寄席が呼ぶのは、二ツ目と真打ち。仲間に落語イベントのプロデューサーがいる強みを生かし、注目の若手を中心に、菊之丞さんら真打ちも招く。

新たなファンも増えつつある。兼矢さんの「やかん」を楽しんだ男性(43)は、約1年前に初めて訪れた。「兼矢さんの落語をもう一度聞きたくて仕事帰りに来た。気軽に立ち寄れる常設寄席が近くにあって幸せ」と笑顔だ。兼矢さんも「みやぎん寄席はお客さんとの距離感が近くて温かい」とほほ笑む。

「若者にも知ってもらって、みやぎん寄席を『笑いの殿堂』にしたい」。9月に開設4年を迎えたみやぎん寄席の席亭内藤さんに余念はない。