鳥取県・平井知事、6選不出馬を表明 20年弱の県政に区切り
鳥取県・平井知事、6選不出馬を表明 20年弱の県政に区切り

任期満了に伴う来春の鳥取県知事選への不出馬を表明した平井伸治知事は21日、5期20年弱を振り返り、県民らに感謝を述べた。自らを「県民の道具」と称し、ダジャレを生かした発信力でPRに奔走してきた。会見では、自作の短歌を披露して「幸せだった」と語った。県トップの突然の引退発表に、県内では驚きの声が相次いだ。

不出馬の理由は国民スポーツ大会

「私は県知事選には出馬しない考えを固めました」。「1期目によく着けていた」というネクタイを着用した平井知事は、集まった記者にこう宣言した。

理由について、2033年に県内で開催予定の国民スポーツ大会を挙げた。「体制作りを考えれば、今私が区切りをつけるという判断がよいのでは」と考えたという。

平井知事は普段から、自らを「県民の道具」と例えており、「県民の道具として何をすべきかだけを考えてきた」と振り返った。

会見で涙、自作短歌を披露

会見では時折目に涙を浮かべた。「多くの皆様のおかげで初志を貫徹できた。今日は冷静にやろうと思ってきたが、誠に申し訳ありません。感謝の気持ちでいっぱいです」と声を詰まらせる場面もあった。

イベントのあいさつや、県出身の人物らと歓談する際、俳句や短歌などで自身の思いを述べることが多い。この日も「一つだけ最後に残してみようかと思い、ゆうべ、手元でこねくり回してみた」と自作を披露した。

〈身も時も 力も知恵も 捧げけり 泥に塗れし「県民の道具」〉

「そういう志でやってこられたことを幸せだったと思う」と締めくくった。

「すぐにやるおばさん」発言は不出馬と無関係

3月の県議会での発言についても質問が飛んだ。平井知事は少子化対策を問われた際の答弁で、「東京ならすぐにやるおばさんがいるかもしれない」と発言。小池百合子・東京都知事を指すと思われかねない発言で物議を醸した。平井知事は「特定の政治家のことをうんぬんするつもりは全くない」と釈明し、その後、県議会に議事録からの削除を依頼。発言は削除された。

会見で、この発言について「特定の人を指したわけではない」と明言。不出馬とは関係ないとした。

手話条例や「スナバ」発言で全国区に

平井知事は任期中、人口減少対策や福祉分野などで新しい施策を打ち出してきた。2013年には、手話を「言語」と位置づけて普及などに取り組む「手話言語条例」を全国で初めて制定。その後、動きは全国に広まり、現在では672自治体に及ぶ。自身も学生時代に習得に取り組むなど手話への関心は高く、「最終日の傍聴席が関係者で満席。可決成立時に、手話で、静けき喝采が議場に舞ったのが目に焼きついている」とこの日の会見で感慨深そうに語った。

官僚出身で国とのパイプも太く、コロナ禍では、全国知事会の対策担当として国との協議の先頭に立ち、21年には会長に就任した。県内では、早期検査や積極的な疫学調査の推進など独自の対策で、感染者を全国的に低い水準に抑え込んだ。

平井知事を一躍有名にしたのが「スタバはないが、日本一のスナバ(砂丘)がある」という発言。スターバックスコーヒー店舗がない全国最後の空白県になったことを受け、12年に人気バラエティー番組の取材に答えたもので、知事が自虐的にダジャレを交えて話す意外性が話題を呼んだ。

これをきっかけに、カニのかぶり物をしたり、アニメキャラなどのコスプレをしたり、なりふり構わないPRを積極的に行い、自身と鳥取の人気を一気に全国区に押し上げた。

県内から惜しむ声

知事の「スナバ」発言をきっかけに「すなば珈琲」をオープンさせた「ぎんりんグループ」の村上亜由美社長(62)は、「いつもがむしゃらで、県外から人を連れてきたいという思いがひしひしと伝わってきた」と振り返り、「鳥取のために尽力され、鳥取を愛してくれてありがとう、とお伝えしたい」と話していた。

県内の政界や経済界からは惜しむ声が寄せられた。平井知事は後継者を立てない意向を示しており、関係者は候補者の選定を急いでいる。

「青天の霹靂」。自民党県連の斉木正一幹事長はそう切り出し、「あれだけ国とのつながりや影響力がある人はそうはいない」と惜しんだ。

日本維新の会県総支部の玉木裕一幹事長は「今後も一緒に県政を前に進めていきたかった。大きな政治の転換期だ」と強調した。

立憲民主党県連の坂野経三郎幹事長は「滅私奉公という言葉のように、休みなく強い覚悟で取り組んできた姿は県民誰もが称賛するものだ」と語った。

公明党県本部の銀杏泰利代表は「本気で県民のために働いていた。『県民の道具』と自称し、精力的に県内を回る行動力のある素晴らしい人だった」と評した。

共産党県委員会の岩永尚之委員長は「次も出られると思っていたので、辞めると聞いて驚いた」と話した。

県中部の経済人でつくる「おしどりの会」は21日午後、倉吉市の倉吉商工会議所で平井知事に出馬を求める要請文を渡す予定だった。直前に不出馬表明となり、同会は平井知事に花束を贈ってねぎらった。同会代表の河越行夫・同会議所名誉会頭は「もう一期やっていただきたかった。残念だがやむを得ない」と話した。