「錫飾り」は、四季折々の自然や動物といった様々なモチーフを緻密な手仕事で色鮮やかに表現したドイツの工芸品だ。飾れば空間が一気に華やぎ、メルヘンな世界に没入できる。
物語を想像させる組み合わせ
楽器を奏でる男性らに先導され、新郎新婦を乗せた馬車が緑豊かな街道を進む――。複数の飾りの組み合わせが物語を想像させる。錫飾りには立てて置いたり、壁などにつり下げたりする種類があり、輸入販売を手がける「フラグランス・エム」(横浜市青葉区)専務の越川峯子さんは「自分だけの街の風景や物語を作り出せる」と魅力を語る。
同社が主に仕入れるのは、200年を超える歴史を持つバイエルン地方近郊の工房「Wilhelm Schweizer(ウィルヘルム・シュバイツァー)」の製品。同地はバロック教会や修道院が集まるキリスト教の中心地で、巡礼者向けの土産品として錫細工の技術が発展したという。
デザインの多様化
宗教的なモチーフが中心だったデザインは時代とともに多彩に。イースターやハロウィーンなど季節の行事にちなんだものや、グリム童話の一節を再現したものもある。木の飾りでは花開く春、緑が生い茂る夏、紅葉する秋、雪が降り積もる冬と、四季ごとの様相を描いた製品をそろえ、細部へのこだわりがにじむ。
別の工房が手がける壁掛けタイプの飾りでは、「医者」「理髪店」といった職業別に仕事風景を描写。医者では、小児科、眼科、整形外科など診療科ごとに内装も描き分けている。
製作工程と一点ものの魅力
製作工程には熟練の職人の技が光る。約300度に熱した錫を細かく彫り込まれた型に流し込み、冷えて固まったら取り出す。ナイフややすりで表面を削って滑らかにし、細い筆で命を吹き込むように色をつけていく。手作業で生み出される製品は同じモチーフでも表情や色みが微妙に異なり、全てが「一点もの」だ。
越川さんは対面販売にこだわり、都市部の百貨店などに期間限定で出店している。「実際に目で見て、好みのものを見つけてほしい」と話している。
額装サービスで劣化防止
フラグランス・エムは、壁掛けタイプの錫飾りをオーダーメイドで額装するサービスを行っている。金色の額縁が華やかさを引き立て、絵画のように楽しめるのが特徴。「錫飾りの魅力を最大限に引き出したい」と考案した。額縁の素材や形状にもこだわりが。高級感のある布張りの台紙は中央に奥行きを設けて立体感を演出したという。
日本はドイツに比べ、湿度が高い。越川さんは「額に入れて外気と遮断すれば、錫の劣化防止にもつながる。より長く楽しんでもらえる」と話している。



