2026年に開催されるアジア・アジアパラ大会を共催する愛知県や名古屋市は、自動車産業など世界有数の産業力を背景に「アジア地域との結びつきの強さ」を強調し、大会を通した国際交流の促進といったソフト面のレガシー(遺産)創出を目指している。
事前合宿での国際交流
ソフトボール女子のフィリピン代表選手が6月、アジア競技大会の事前合宿で日本福祉大(愛知県美浜町)を訪れ、女子ソフトボール部員と2週間、合同練習で汗を流した。両国の選手が2人1組でキャッチボールなどをし、フィリピンの選手に部員が身ぶり手ぶりで打ち方を助言する場面もあった。
お互い同年代で、練習後には菓子をつまみ、スマートフォンの翻訳アプリも使って会話し、好きな音楽の話で盛り上がった。話題は「次第に恋バナ(恋愛の話題)が増えた」(樋口ゆら主将)という。
多氣(たげ)彩華さん(22)はアリッサ・ダニエル選手(24)と仲良くなり、合宿後もSNSでやりとりした。「彼氏にプロポーズされた」と伝えられると、「おめでとう!」と返した。
市民レベルの交流の先駆け
代表は9月上旬に合宿で再来日し、マリア・ペレス選手(20)は「幼い頃からの友人に再会したよう」と喜んだ。同大の部員は日本代表に選出されておらず、試合当日は応援に行く予定だ。「お金をためて、いつかフィリピンに遊びに行くね」と約束している。
事前合宿での交流はその一つで、サウジアラビア、タイなど10以上の国・地域が新潟県柏崎市、富山県黒部市、静岡県富士市、佐賀県鳥栖市など各地で行う。台湾のアーチェリー選手団は7月に愛知県岡崎市で大学生らと交流。市スポーツ振興課の谷分信隆係長は「台湾側との関係を継続していきたい」と期待する。
こうした市民レベルの国際交流の先駆けとされるのが、32年前の広島大会だ。「一館一国運動」として、広島市内の約60の公民館が担当の国・地域を決めて選手らをもてなした。
ネパールを担当した同市佐伯区の五日市公民館は今も交流が続く。5日の料理講座では市民約10人や講師のネパール人らが8月に発生した土石流の犠牲者を悼んで黙とうした。参加した高田登代子さん(86)は「最初はどこにある国かすら知らなかった。交流を続けられてよかった」と話した。
ハード面のレガシー
今大会では持続性のある施設整備など、ハード面のレガシー作りにも取り組んだ。選手団向けに、コンテナ型施設とクルーズ船、既存のホテルを合わせた従来にない宿泊モデルを示している。名古屋港のふ頭の一角に200棟のコンテナホテルが整然と並ぶ。1棟(約70平方メートル)に2部屋あり、ベッドやシャワーなどを備え、選手ら約2000人が宿泊する。
大会組織委員会は「大会後も平時はホテル、災害時は応急仮設住宅として活用できる」とPRし、様々な場での使用を想定する。大会のレガシーとして継承したい考えだ。過去の五輪などでは建設された施設が大会後に十分利用されない例もあった。そうした教訓を踏まえ、今大会は約600億円かかる選手村の建設を見送り、コンテナホテルなどを活用。50余りの競技会場のうち新設・建て替えは2会場のみといった簡素化を図っている。
環太平洋大の真田久教授(スポーツ人類学)は「国際交流はレガシーとして大切で、開催経費を抑える工夫も必要だ。今大会は今後も地方で国際大会を開けるかどうかの試金石になりうる」と指摘する。



