奈良国立博物館(奈良公園内)で10月24日から11月9日まで、『第78回 正倉院展』が開催される。今年は第1回展が開催された昭和21年から80年を迎える。
約1300年を超えて守られた宝物
正倉院の宝物は、奈良時代に日本を治めた聖武天皇のご遺愛品を中心に、当時一級の工芸品から人々の暮らしを物語る文書まで多彩な内容の品々を擁する宝物群で、その数は9000件にのぼる。今年の正倉院展も選りすぐりの宝物が会場を彩る。
「紅牙撥鏤碁子(こうげばちるのきし)」「紺牙撥鏤碁子(こんげばちるのきし)」など聖武天皇のご遺愛品が並ぶ。中でも「漆胡瓶(しっこへい)」は、西方のペルシアに由来する水差しを東アジアの漆工の技術を用いて作ったもので、当時の東西交流の象徴的存在として注目されている。
格調高い書風を示す「梵網経(ぼんもうきょう)」や、躍動的な文様が不思議な魅力を放つ「密陀彩絵箱(みつださいえのはこ)」などから、当時の人々の祈りの心を伺える。また、近年、宮内庁正倉院事務所が技法や素材の調査を実施した古代の藺筵の関連品も展示される。
出陳宝物60件、うち11件が初出陳
出陳宝物は60件(北倉13件、中倉22件、南倉22件、聖語蔵3件)で、うち11件が初出陳。宝庫の開扉に天皇の許可を要する「勅封」等の制度のもと厳重に管理され、継承されてきた、世界でも他に類を見ない遺産の一部が公開される。
注目の展示品解説
「漆胡瓶」1口は、西アジアに由来する把手付きの水差し胡瓶で、黒漆地に草花やシカ、オシドリ、山岳など種々の文様の形に切った銀の薄板を貼り華やかに装飾されている。銀板の文様には唐代に流行した技法が用いられており、唐からの舶載品である可能性が高い。エックス線撮影により本体は木の薄板を巻き上げ、もしくは輪積みしたうえで漆を塗っていることが判明。『国家珍宝帳』に記載され、聖武天皇のご遺愛品と考えられる。
「紅牙撥鏤碁子」10枚は、花喰鳥を表した象牙製の碁石。撥鏤とは象牙を染めた後、表面を彫ることで白い地を出して文様を表す技法。成形した象牙を赤色に染め、ヤツガシラとみられる鳥文を彫り出し、文様の一部に緑色と黄色をさして彩りを添えた可憐な逸品。現在、正倉院には紅牙撥鏤碁子132枚、紺牙撥鏤碁子120枚が伝わっており、本展では紺牙撥鏤碁子も10枚展示される。聖武天皇の四十九日に際して東大寺大仏に献納された宝物であることが『国家珍宝帳』に記載される。
「伎楽面 酔胡王(ぎがくめん すいこおう)」1口は、酒に酔った胡国(ペルシアに代表される西アジアや中央アジアの国々)の王を表した面で、従者を従えて宴会をするという演目であったという。目が大きく鼻の高い面相や丈の高い冠帽は、西方の風俗をイメージ。比較的軽い木材のキリによって作られ、全体に貝殻胡粉による白色を基調とした彩色が施されている。
異色の宝物「虹龍」
「虹龍」1点は、ニホンテンのミイラ。永享元年(1429)に将軍の足利義教が蘭奢待を切り取った際に「竜日干」を見たとの記録が残り、この龍がいるために正倉院の扉を開く時には雨が降るという。本品はこれに該当すると見られる動物のミイラ。体型や指の数、歯の特徴といった観察を踏まえた近年の研究によりニホンテンと判明し、雌の可能性が高い。明らかな人為加工痕は認められず、宝庫に侵入した後に自然乾燥したのか、こうしたミイラを龍に見立てて納入したのかは不明。正倉院の神秘性を示す異色の宝物。
展覧会概要
展覧会名:『第78回 正倉院展』
会期:2026年10月24日(土)〜11月9日(月)※会期中無休
会場:奈良国立博物館 東西新館
開館時間:8:00〜18:00(金・土・日曜日、祝日は20:00まで)※入館は閉館の60分前まで
出陳件数:出陳宝物60件(北倉13件、中倉22件、南倉22件、聖語蔵3件)うち11件は初出陳



