韓国映画『BOSS/ボス』、誰もボスになりたがらない後継者争いを描く 監督が北野武や三谷幸喜の影響明かす
韓国映画『BOSS/ボス』監督、北野武や三谷幸喜の影響明かす

韓国映画『BOSS/ボス』(10月23日公開)は、組織の頂点を目指すのではなく、誰もボスになりたがらないという前代未聞の後継者争いを描く異色作だ。韓国で244万人を動員し、2025年の年間興行収入ランキングで第5位を記録した本作から、主人公たちのかつての姿を描く大乱闘シーンの本編映像とメイキング写真が公開された。

次期ボスの座を巡る「譲り合い」

物語の中心となるのは、カリスマ的なボスを支え、組織のために抗争を生き抜いてきたスンテ(チョ・ウジン)、ガンピョ(チョン・ギョンホ)、パノ(パク・ジファン)の3人。ボスが不慮の死を遂げ、次期ボスの候補に挙がるが、それぞれの思惑はまったく異なっていた。

本命候補のスンテは、得意の料理で全国制覇することが夢。対抗馬のガンピョは社交ダンスに魅了され、タンゴダンサーを目指している。一方、唯一ボスになる気満々のパノは、血気盛んだが人望がない。そこへ、組織に潜入したものの正体がバレバレのダメ警官テギュ(イ・ギュヒョン)まで加わり、次期ボスの座を巡る前代未聞の「譲り合い」が始まる。

若き日の3人を描く大乱闘シーン

今回解禁された本編映像は、そんな3人がまだ組織の頂点を目指し、兄貴分(イ・ソンミン)のもとで抗争に明け暮れていた時代を描いた場面。ある日、対立する勢力のもとへ駆けつけたスンテとガンピョが目にしたのは、大勢の敵を前にガスボンベに火をつけようとするパノの姿だった。

「男として――死ぬにはうってつけの日だ!このシマを奪って死んでやる!」とガスボンベに着火寸前のパノ。現れたスンテとガンピョに「たった2人か?」と少し不満げだ。スンテは穏便に事態を収めようとするが、相手から手斧を投げつけられたことで交渉は決裂。わずか3人で大勢の敵を相手にする乱闘へと発展する。兄貴分が「俺の部下に手を出した奴はどこだ!」と駆けつけた頃には、すでに3人が敵を制圧していた。

その夜、食卓を囲んだ4人は、互いを守り、仲間を大切にすることを誓い合う。兄貴分から将来の夢を尋ねられたパノは「ヤクザなら誰もが目指すのは“親分”です!」と答えるが、ガンピョは「ボス」と一言。スンテは「俺は“チャンケ”。意味は“店主”つまりボスのこと」と答える。兄貴分は「それじゃ全員同じだな。俺がボスになれば、次のボスはお前らの中の1人だ」と、3人ともボスを目指していると受け止めたのだった。かつては同じ夢を抱いていたはずの男たちが、なぜボスの座を押し付け合うようになったのか。今回の映像は、その出発点を描いている。

監督が語る逆転の発想と日本映画からの影響

監督を務めたラ・ヒチャンは、本作について、従来のノワール映画とは逆の発想から企画が始まったと説明する。「伝統的な作品……例えば韓国で言うと『インサイダーズ 内部者たち』、それから香港の『インファナル・アフェア』、フランシス・フォード・コッポラ監督の『ゴッドファーザー』などではみんながボスになりたがっている。それとは逆の発想で描くことによって、Z世代の若い人たちが見てもリアルだと思えるような企画にしようという狙いがありました」

香港ノワール映画からの影響についても「それは確実に意図したもの」と認め、かつて組織が勢いを持っていた時代を描くことが、現在の登場人物たちとの対比につながると語る。「ボスになりたくない人たちもかつてはボスになることを夢見ていた。そういう瞬間があるからこそ、“ボスになりたくない”と思っている今とギャップが生じてコメディになると思いました。だからこそ80年代90年代の組織に力があって光輝いていた時代を短くてもいいので描くことが重要でした」

さらに、影響を受けた日本の映画監督として北野武と三谷幸喜の名前も挙げている。組織の抗争を描くアクションと、出世を嫌がる男たちのコメディを組み合わせた本作について、監督は日本の観客に向けて「できればこの映画を見るときには忙しい日常は少し忘れて、コメディやアクションを楽しんでいただいて、自分の夢についてもちょっと考える時間にしていただけたらいいなと思います」とメッセージを寄せている。