サッカー・ワールドカップで準優勝したアルゼンチンのメッシ選手にあこがれたイラクの少年を主人公にした映画「バグダッド・メッシ 片足のサッカー少年」が8月7日から全国で公開される。戦禍で左脚を失いながらも夢を追い求める姿を描いており、川西市出身の女性が設立した小さな配給会社が上映にこぎつけた。
左脚を失った少年と支える家族
映画は2009年、イラク戦争下のバグダッドで、当時バルセロナに所属していたメッシ選手を敬愛し、サッカーに打ち込む11歳のハムディが主人公。ある日、街角でサッカーをしていると、米国の民間警備会社と反政府勢力の戦闘に巻き込まれ、左脚の一部を失う。それでもボールを追うことをあきらめない少年と、支える家族の様子を映し出す。
ハムディ役のオーディションには戦禍で障害を負った子ども100人が集まり、その中から、5歳の時にテロにより片方の脚と父親を失ったアフマド・モハメド・アブドラさんが選ばれた。作品は戦争や宗派対立、貧困、差別、放置された地雷原のある中で生き抜くことを訴え、第97回アカデミー賞国際長編映画賞のイラク代表にもなった。
川西出身の女性が配給権を購入
この作品に目を向けたのが、川西市出身で東京の映画配給会社「エルフィルムズ」代表の粉川なつみさん(29)。ロシアの侵略を受けるウクライナのアニメ映画を日本で多くの人に見てもらうために起業し、クラウドファンディングなどで資金を集めて全国上映を実現させた。
昨年9月、川西市で開かれた戦後80年イベントに若い世代の一人として登壇し、映画を通じて平和の大切さを呼びかけた。参加者から「世界で起きている戦争の実態がわかる映画の上映を続けてほしい」との感想が寄せられ、気にかけていた。そんな時、ネットを通じて「バグダッド・メッシ」の存在を知り、「W杯で注目される中、戦争の悲惨さを訴えることができる」と、日本での配給権を購入した。
粉川さんらスタッフ4人が、全国各地の映画館へのセールス、ネットでのPR、ポスター・チラシの制作、在日イラク大使館の後援取りつけなどをこなし、公開を待つばかりとなった。
「遠い国の出来事と思わずに」
映画はハッピーエンドとはならないが、粉川さんは「世界各地にサッカーに熱中する主人公のような子どもがたくさんいる。しかし、生まれ育った国が違うことで、日常生活と身体を奪われている現状がある。遠い国の出来事と思わずに関心を持ってもらえれば」と話している。
県内ではシネ・リーブル神戸で8月21日から上映される。



