「沼プー」の記憶、全国へ 閉鎖前49日間追う映画、9月5日公開
「沼プー」の記憶、全国へ 閉鎖前49日間追う映画、9月5日公開

さいたま市南区で昨年6月に閉鎖されるまで52年間愛された市営プールの最後の49日間を追ったドキュメンタリー映画「沼影市民プール」(84分)が9月5日から全国で順次公開される。同市育ちで子どもの頃によく通ったという太田信吾監督(40)がメガホンを取った。町の記憶に人々の人生を重ねながら、閉鎖を惜しむ声を紡いだ。

「沼プー」の歩みと閉鎖までの経緯

沼影市民プールは1971年に開業し、「沼プー」の愛称で親しまれた。ウォータースライダーなどが人気で、累計600万人が利用した。2022年、市がプールを取り壊し、跡地に小中一貫の義務教育学校を作る案を示した。反対の署名活動や市議会で論戦が展開された後、屋外施設は24年2月、屋内施設は25年6月に閉鎖され、その後取り壊された。

最終営業日と監督の思い

太田さんはプール近くの弁当店で働く友人から提案された映画化の案に賛同し、屋外施設が23年8月末に営業を終えるまで密着取材した。「やるべきことはやれた」と感慨深げに語る。

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映画では、最終営業日を迎えた場面で、プール所長の会田孝志さん(49)があいさつすると、利用者から拍手が起きた。同市生まれの会田さんは高校の元水泳部員。専門学校でスポーツを学んだ後、公共施設の管理会社に入社、23年間、沼影のプールを担当した。2006年にふじみ野市のプールで小学2年生の女児(当時7歳)が吸水口に吸い込まれて死亡した事故を受けた安全対策や応急手当ての態勢作りにもあたった。「従業員も懸命に取り組んだことを知ってほしい」と願う。

地域の記憶と今後の行方

映画ではプールの最終営業日後、向かいの駄菓子店「いせき」を会田さんが訪れ、店主の森田忠征さん(今年7月に81歳で死去)に礼を述べる場面も収めた。水遊びを楽しんだ子どもたちでにぎわった店は、プールの開業後にできた。晩年、森田さんは脳血管障害を患い、長男で会社員の誠さん(54)が仕入れを担当していた。森田さんは作中で、「埼京線ができてマンションが建ち、人口が増えた」と地域の移り変わりを振り返り、「学校を作るのに、プールがなくなるのは仕方ないね」と述懐した。

さいたま市が開校準備を進めている義務教育学校は3回連続で入札不調となっている。市が目指す30年の開校にめどは立っておらず、敷地の一部をバスケットボールのコートとして貸す案も浮上している。

太田さんは「都市開発は世界共通の課題。フランスや韓国の試写でも共感していただいた。プールは、様々な人が生きるうえで支えになってきた。閉鎖による喪失を受け入れるまで、人々の心が揺れた過程を映画を通して知ってほしい」と話している。

県内では9月5日に、ユナイテッド・シネマ浦和、同入間、イオンシネマ浦和美園、同大宮で公開される。OttO(大宮)は開始日未定。

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