第31回釜山国際映画祭(10月6日〜15日)で12日、映画『このごにおよんで愛など』(11月27日公開)の公式記者会見が開かれ、広瀬奈々子監督と俳優の柄本佑が出席した。長澤まさみはインフルエンザのため欠席し、柄本と広瀬監督は長澤演じる詩の顔パネルを手に登場した。
柄本佑、初の海外映画祭で「海越えたな」
今回が初の海外映画祭参加となった柄本は、前日のワールドプレミアで予想とは異なる場面に笑いが起きたことを振り返り、「『海越えたな』という感じがして、とてもうれしかったです」と語った。釜山については「街全体で映画を盛り上げている空気感がありました」とコメントした。
本作は、長澤、柄本、石橋静河が共演する広瀬監督の長編第2作。結婚3年目の絵本作家・小島詩(長澤)には、夫・杜夫(柄本)に言い出せないまま関係を続けている恋人で、担当編集者の倉持潤奈(石橋)がいる。どちらとの関係も手放せない詩が「3人で子どもを作る」と提案したことから、3人の関係が変化していく。
「わがままで欲しがり屋さん」な3人
柄本は演じた杜夫について、「この3人はみんなすごくわがままで欲しがり屋さんなんです」と説明。それぞれの欲望を考える中で、杜夫は「とにかく『詩と一緒にいたい』というシンプルな思いをベースにして演じました」と明かした。
役作りでは広瀬監督と細かなやり取りを重ねた。3人で豚の角煮を食べる場面のリハーサルでは、詩と潤奈の関係に気づいていないつもりで演じても、2人に視線を向けるだけで、監督から「2人の関係を勘ぐっているように見える」と指摘されたという。そこで、その場を楽しむ様子を少し大きく表現し、疑いを持っていない状態と、その晩に詩から関係を打ち明けられたときの落差をつけることにした。また、告白を受けて慌てる演技については、柄本から動きを止める案も提案したといい、「“動と静”の使い分けみたいなことですかね。監督から受けた演出によって出てきたという印象です」と振り返った。
同性カップルの友人から着想、固定観念に悩む人へ
広瀬監督は同性カップルの友人に子どもができたという知らせが作品を作るきっかけになったと説明。その子が成長したとき、いつか映画を見てもらいたいと思ったという。「婚姻や結婚、出産といった既存の家族像や固定観念に縛られて悩んでいる方に届けられる作品になればと思っています。当事者だけに閉じたお話にするのではなく、同性婚という形を借りながら、3人の物語として展開させました」と語った。
結婚や出産、仕事をめぐるプレッシャーについては、「日本では、『こうでなければいけない』という価値観にとらわれ、我慢しながら生きている女性が、まだたくさんいらっしゃると感じています。特に、出産を考える年齢や時期と、仕事を続けることとの兼ね合いには難しさがあります。私自身、そうした問題に強い関心があり、この作品にも女性のライフステージというテーマを盛り込みました」と話した。
さらに、社会の規範を守って懸命に頑張る人ほど、そうではない人に対して「私こんなに頑張っているのに」と感じることもあると指摘。「だからこそ、このキャラクターたちを通して『もうちょっと楽に生きていいんだよ』というメッセージを届けられたらと思っています」と作品に込めた思いを語った。
是枝裕和監督や西川美和監督の監督助手を務め、『夜明け』(2019年)で監督デビューした広瀬監督が、自ら企画・脚本を手がけた。撮影監督のヤオ・ホンイーら台湾のスタッフも参加した日台合作で、同映画祭のコンペティション「釜山アワード部門」に出品されている。
あわせて、柄本と石橋が釜山の海岸沿いを歩く姿や、映画祭のロゴを背に指ハートを作る様子など、現地でのオフショットも公開された。24日にはジャパンプレミアが開催される。