岩崎裕介監督の初長編「チルド」が公開中だ。今年2月のベルリン国際映画祭フォーラム部門で国際批評家連盟賞を受賞し、現地の観客からは大きな笑いが起きた。監督は「僕はリアルを突き詰めて描いていたんですが、そこに面白さを感じたんでしょうね。日本のヤバさを感じ取ってもらえたのかも」と笑う。
監督自身を投影した主人公
物語はコンビニの店内とその周辺が舞台。31歳の店員・堺(染谷将太)は無気力かつ無感動に同じような日々を淡々とやり過ごす。作品冒頭のコンビニの商品棚に無機質に陳列されたサラダチキンのアップが印象的だ。監督は「堺は僕自身であり、サラダチキンは効率化や利便性が徹底的に行き届いた現代そのものなんです」と語る。
主演の染谷将太について監督は「彼は化け物」と絶賛。「あの死んだような表情。最初にちょっと意図を伝えただけで、ほとんど演出していないのに」と述べる。監督自身も仕事に忙殺され、食事に気を配る余裕がなくなった時期があったといい、「何も考えずにコンビニに行き、サラダチキンを買ってむさぼっていた。自分の意思すらなくなり、ただ買わされているだけ。これこそ僕だ、と思った」と振り返る。
コンビニ崩壊が描く現代社会
店を経営するオーナー(西村まさ彦)は徹底したマニュアル通りに動くことを強いるが、新しく来たアルバイトの小河(唐田えりか)は疑問を抱き自らの意思を主張する。そこからオーナーの行動に異変が生じ、崩壊が始まる。店内のディテールや裏側でのやりとりがリアルなのは、監督の父親が実際にコンビニのオーナーであり、直接見聞きしたことが基になっているためだ。
理不尽なシーンの数々は観客の生活にも思い当たることが多い。監督は「物作りにおいては『あるある』という普遍性を大事にしている。そこが、ホラーのつもりではあるんだけど、笑えるおかしさにつながったのかも」と語る。
リアリティの源泉と今後の展望
CMディレクターとしても活躍する岩崎監督は、新進の映画会社「NOTHING NEW」と組み映画監督としての歩みを進めている。「CMでは本質を突いた面白いものを作りたい。映画では、もっと強度があって純粋なホラーを作っていきたい」と野心を語る。



