黒沢明監督「トラ・トラ・トラ!」降板の謎を解く音声テープ発見、国立映画アーカイブが公開
黒沢明監督「トラ・トラ・トラ!」降板の謎を解く音声テープ発見

「映画史の謎」とされてきた黒沢明監督(1910~98年)の降板劇に、新たな手がかりがもたらされた。日米合作の戦争映画「トラ・トラ・トラ!」の撮影中、黒沢監督の音声を収めたテープが発見されたのだ。国立映画アーカイブ(東京)が2026年7月17日に発表した。このテープには、黒沢監督が俳優に演技指導をする声などが記録されており、同アーカイブは「幻の撮影現場の様子がわかる貴重な資料」と評価している。

「トラ・トラ・トラ!」とは

「トラ・トラ・トラ!」は、1941年の真珠湾攻撃を描いた日米合作の戦争映画だ。米20世紀フォックスが企画し、日米双方が監督を起用する形で製作が進められた。米国側はリチャード・フライシャー監督、日本側は黒沢明監督が務めることになった。しかし、1968年12月2日の撮影開始からわずか約3週間で、黒沢監督は突然降板。その後、関係書類を破棄するよう全スタッフに指示したとされ、この期間に撮影したフィルムは現在も見つかっていない。映画はその後、舛田利雄監督と深作欣二監督が演出を引き継ぎ、1970年に公開された。黒沢監督の降板理由や撮影の詳細は長らく不明で、「映画史の謎」とされてきた。

発見された音声テープの内容

今回発見された音声テープは、2022年11月に本作の関係者から国立映画アーカイブに提供された。録音技師の渡会伸(わたらい・しん)氏が録音したもので、11本、総時間は約138分に及ぶ。東映京都撮影所で撮影された際の録音で、必要な部分を切り出し、実際に映画で使用する予定だった音声だという。テープには、黒沢監督が出演者の演技に対し、「そういう芝居するだろ、するからいけないんだ」などと指摘する声や、自らセリフを読み上げて演技指導をする声が収められている。

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降板理由の新たな解釈

黒沢監督は撮影中、スタッフとのトラブルを抱えていたとも言われる。降板理由については、当時「強度のノイローゼ」などと報じられたが、国立映画アーカイブの岡田秀則主任研究員は「音声を聞く限り、非常に冷静に撮影をしているように思われる」と指摘する。同研究員は「音声は映像に次ぐ貴重な資料で、映画史上に残る発見と言える。有効な活用法を考えたい」と述べている。

音声の使用とアーカイブの現状

この音声は、現在20世紀フォックス作品の権利を保有するウォルト・ディズニー・ピクチャーズとの協議により、同アーカイブの主催事業に限って使用が認められている。国立映画アーカイブは、映画資料の保存や研究、上映を行う日本唯一の国立映画専門機関だが、独立行政法人国立美術館が配分する国からの運営費交付金の減額などで活動資金不足に直面している。そのため、2026年9月23日まで、目標金額1億円のクラウドファンディングを実施中だ。

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