俳優の横浜流星が主演を務めるTBS系金曜ドラマ『LOST10』(毎週金曜 後10:00)。脚本を手がける奥寺佐渡子と、演出を務める塚原あゆ子監督が、本作のタイトルに込められた“LOST”の意味から、今の時代に感じる不安や生きることの切なさ、見る人それぞれに委ねられた“余白”まで、『LOST10』の奥にあるテーマについて語った。
タイトルに込めた“ロスト”の意味
タイトルが『LOST10』になった経緯について、奥寺は「仮タイトルのまま進めていて、『本タイトルは後で考えようね』と話していたんです」と振り返る。新井順子さんと塚原さんが考えたアウトラインは決まっていたが、脚本を書いている間に話が変わってしまうこともあるため、いざ本タイトルを決める段階で「物語の中で誰かが何かを失っていることが多いことに気づいた」という。「単に何かを失うということだけではなく、いろいろな意味での“ロスト”が描かれている話だなということで、『LOST10』に落ち着きました」と説明した。
塚原は「いずれも何か“ロスト”にまつわる話なんです。連続性はあるんですけれども、それぞれの話にも違った味わいがあればいいなと思っていて。1話1話を深く読むのが楽しかったですね」と語る。
第1話制作の苦労と印象的なシーン
第1話を作る上で特に意識したことについて、奥寺は「人物紹介だけにならないようにというのだけは気をつけました」と明かす。「第1話は台本上でいろいろな状況を説明しなくてはいけなくて、その説明に気を取られてしまっていたのですが、映像で見ると本当にスッキリしていて。いろいろなことがちゃんと伝わってくるので、そこが一番うれしかったです」と語った。
塚原は「第1話って難しいですよね」と共感しつつ、山での撮影を振り返る。「山に行った時も、すごい霧で。標高が高いので基本的に天気が変わりやすくて、もう“ロスト”って感じの“ミスト”というか、ほぼ何も見えないくらいだったんです。それが、撮影の終盤にはすごく晴れて、ようやく山の全景が見えたのが印象に残っています」と話した。
奥寺佐渡子の脚本に宿る“余白”
塚原は奥寺の脚本の魅力について「山場のところは、セリフもト書きも少なくて、『何かをやってくださいね』みたいな書き方なんです」と説明。一般的には山場のシーンほど細かく書かれることが多いが、奥寺は「逆にすごく引き算をされる」といい、『夜行観覧車』(2013年)の時から「このシーン、(セリフもト書きもほとんど)書いていないから怖いよ」と言われてきたという。「スタッフも『ここ2行しか書いてないですね、危ないですね』と言うくらい、気合を入れていかないといけない。想像力を求められるシーンが、ちゃんと膨らんだかどうかを試されている感じがします」と語った。
奥寺は「書きすぎると緊張感がうすれるので」とあえて余白を残していると説明。「そういうことを読み取ってくださるチームじゃないと、なかなかできないことですよね。他では『もうちょっと書き足して』と言われることも多いので、たった2行を、すごく豊かなシーンにしてくださるのはありがたいです」と感謝を述べた。
また、奥寺は塚原への信頼について「私が言うまでもなく、やはり演出のうまさ。でも、人間的に好きというのはあります」と語り、塚原も「私も奥寺さんが好きです」と応じると、奥寺は「打ち合わせが楽しいですもん」と笑顔を見せた。
2026年の今、作品に映し出したかったこと
2026年の今、この作品を通して描きたかったことについて、奥寺は「何か特定のこと、というわけではないのですが、いつもこの時代の不安みたいなものを、少しでも画面に映して、残せたらなというところがあります」と語る。「社会に対する不安や、『今、これからどうなってしまうんだろう』という気持ち、人間関係における不安など。何を怖いと思っているのか、何を信じたらいいのか分からないという気持ちを残したいと思っています」とし、「10年後にこの『LOST10』を見たときに、『2026年にはこういうことを、みんな不安に思っていたんだ』と思い出してもらえるとうれしい」と願いを込めた。
塚原は“ロスト”という言葉から「今に限らず、常に生きるというのは失うことなんだな」と思ったという。「いろいろなものを失いながら生活しているけれど、じゃあ、どうするのか。小駒と直の手が何を救い上げ、どういうふうに結末を迎えるのか。それは自分や誰かを救い上げる手でもあるし、救えない手でもある。台本の中には、生きることの切なさややるせなさみたいなものがすごくあふれているんです」と説明。「でも、それをエンタメとして、金曜日に重くのしかかることなく、救い上げる手を期待しながら、救われながら、気持ちも明るくなるというか、ワクワクする1時間にしたい。今こそ、エンタメとして届けるべきタイミングの作品だと思ってやっています」と力を込めた。
答えを一つに決めない物語
作品全体のテーマを最初から明確に決めていたのかという問いに対し、塚原は「始まってすぐに小栗さんから『この作品は最終的にどこに向かいますか?』『主題というか、訴えたいことは何ですか?』と聞かれたんです」と明かす。その時、奥寺が本打ちの際に話した「いろいろな意味を持つ“ロスト”」という言葉が印象に残っており、そこから「いろいろな“ロスト”につながる言葉や、物語の中での意味を思い浮かべていた」という。ただ、「一つの主題として、『最後にこうさせなければならない』と決めているわけではない」とし、「それよりも受け取る側に何かあるように作れたらいいなと思った」と語る。小栗には「最終回までまずは読んでみて、自分で考えてもらいたいけれども、その中に言葉に落ちてはいないはずです」と伝え、「行間を共に読んで、育てて、最終的には見ている方に解釈してもらうまでの物語にしましょう」と話したという。
見る人によって受け取り方が変わる作品になるのかという問いには、塚原が「そうですね。何を感じるかは、それぞれ違っていいと思います」と応じ、奥寺も「私自身も、書きながら『こういうことなのかな』と思うことがありますけど、それを一つの答えにしたいわけではないので。見てくださった方が、それぞれ何かを感じてもらえたらうれしいです」と語った。
視聴者へのメッセージ
最後に視聴者へのメッセージとして、奥寺は「第1話は遭難救助ものと思われるかもしれないですが、第2話からどんどん話のテイストや、人物の印象が変わってきます。小駒と直がどこにたどり着くのか、ぜひ最後まで見届けていただければと思います」と呼びかけた。
塚原は「金曜の夜に結構ぴったりだなというぐらいワクワクするし、土日に考察をしたり、お友達と月曜日のランチで『見た?』と話題に出したりするように作っているつもりなので、それぞれの楽しみ方で見てくださったら光栄です」と締めくくった。