井上ひさしの戯曲を上演する「こまつ座」が、大正デモクラシーの旗手である政治学者・吉野作造と、官僚の弟・信次を描く名作「兄おとうと」を上演中だ。横田栄司と岡本圭人が、対立する兄弟役を演じている。
こまつ座初出演、オファーは二つ返事
共にこまつ座への初出演で、「憧れの劇団だった」と口をそろえる。出演オファーに対し、それぞれ二つ返事で引き受けたものの、「こんなに歌って踊るとは想定外でした」と顔を見合わせて笑う。
対立する兄弟と奔走する姉妹
物語は作造と玉乃、信次と君代という2組の夫婦を中心に展開する。「政治は国民の考えにもとづいて行われるべきだ」と主張する作造と、天皇主権を掲げる国の官僚である信次は対立する。「国家とは何か、日本人とは何かを問いかける点で今、上演するのにふさわしい作品だと思います」と横田。岡本も「作造、信次共に日本を良くしたい気持ちは同じなんですよね。思想の違いというと難しく感じるが、これだけ分かりやすく、面白いのはさすが井上戯曲」と語る。
玉乃と君代は姉妹で、対立する夫同士の関係性を変えようと奔走する。玉乃役の彩吹真央と君代役の霧矢大夢は宝塚歌劇団OG。他に平体まひろと松角洋平が複数の役を担当する。演出は文学座の鵜山仁。「共演者の方々が実力派しかいない。我々2人は置いていかれないように必死に頑張っています」(横田)、「鵜山さんの言葉は世界が広がっていく感じがする。決めつけずに自由な発想を尊重してくれるのでとてもやりやすい」(岡本)と充実した様子だ。
「十二夜」を機に生まれたタッグ
今年9月、6月に死去した翻訳家の小田島雄志のお別れの会で上演されたシェークスピアの「十二夜」リーディング公演で共演。岡本は代役で、2日前に出演が決まったという。横田が「(岡本は)キラキラしているのに熱い心を持っていて頼もしい」と絶賛すると、「今まであまり褒められたことがなくて。尊敬する横田さんにそう言ってもらえて光栄です」と岡本。「苦労してきたんだね」とねぎらう横田は本当の兄のよう。息ぴったりのタッグに注目だ。
東京・新宿の紀伊国屋サザンシアターで11月1日まで上演中。(電)03・3862・5941。(小間井藍子)