読売新聞Books1周年、張本勲氏の軌跡や戦争責任検証など注目作を紹介
読売新聞Books1周年、張本勲氏の軌跡や戦争責任など注目作

読売新聞の注目記事などを電子書籍化するレーベル「読売新聞アーカイブ選書」が、「読売新聞Books」としてリニューアルされ、1年が経過した。「読売新聞アーカイブ選書」は過去記事を中心に編集されていたが、新レーベルでは読売新聞オンラインの連載なども随時取り入れ、刊行タイトルの幅を広げている。リニューアル1周年に合わせ、いま読んでおきたい作品を紹介する。

張本勲さんの知られざる素顔

9月9日、プロ野球の東映や巨人などで活躍した張本勲さんが亡くなった。「広角打法」で3085本の日本プロ野球最多安打記録を作り、引退後はテレビ番組での決めぜりふ「喝!」でも人気を博した。その張本さんが、読売新聞のインタビュー連載「時代の証言者」で自身の生い立ちから野球人生までを語ったものを電子書籍化したのが「最多安打で『喝!』 張本勲 不屈の闘志で極めた野球道」だ。

豪放磊落(らいらく)のイメージが強い張本さんだが、インタビューからは異なる顔も浮かび上がる。4歳で右手に負った大やけどのために指が内側に曲がったままになったこと、その責任を感じている母を二度と傷つけることがないようプロ入り後も手のハンデを誰にも語らなかったこと、引退後初めて手を見せた川上哲治・元巨人監督に「おまえ、こんな手で」と涙ぐまれたこと、王貞治さんの厳しい練習を見て自分の慢心に気づかされたこと、そして故郷・広島で5歳の時に被爆して以来ずっと原爆症の不安におびえてきたこと――。いくつもの知られざるエピソードが明かされ、張本さんの優しさと繊細さ、そして強さに驚かされる。

思春期外来の現場から

精神科医の武井明さんが、読売新聞の医療・健康・介護サイト「yomiDr.(ヨミドクター)」で連載した「思春期外来の窓から」も今年、「読売新聞Books」のラインアップに加わった。全50回の連載を上下巻に分けて収めている。

武井さんは思春期外来の専門家で、診察に訪れた子どもたちの言葉を糸口に、その悩みや葛藤、苦悩の核心に迫ろうとする。不登校の中3女子、彼氏にアルバイト代を渡し続けた高2女子、手洗いを1日に20回もしてしまう不潔恐怖にとらわれた中2男子――。武井さんは医師にありがちな「上から目線」になることなく、彼らと同じ高さまでかがみながら、時間をかけて言葉を引き出していく。

そこからは、保護者世代が子どもの置かれた現状を把握し、自身の行動を省みることの大切さがよくわかる。加えて、子どもたちの悩みの一部は、社会の中で葛藤する大人たちにも当てはまるのだと気づくはずだ。この本は、大人が子どもの心に近づく一助となると同時に、日々の生活で息苦しさを感じる大人へのアドバイスにもなっている。

戦争責任の検証を未来へ

今年は昭和元年(1926年)から数えて満100年。政府は「昭和の躍動や体験を発掘し、次世代に伝承していくための施策」「昭和を顧み、昭和に学び、未来を切り拓いていくための施策」といった「昭和100年」関連施策を行っているが、ここで忘れてはならないものの一つが、遠くなってしまった戦争の記憶、記録をどう引き継いで行くかということではないだろうか。現在でも世界に目を向ければ、軍事衝突や紛争が各地で続いており、戦争は決して他人事ではない。我が事として戦争を考える時、大きく役立ってくれるのが「検証 戦争責任 全一冊」だ。

1931年(昭和6年)の満州事変から、日中戦争、そして太平洋戦争へと、日本はなぜ戦争に突入したのか。どうして降伏をためらい、広島と長崎への原爆投下などの悲惨な被害を広げてしまったのか――。戦勝国による「東京裁判」ではなく、日本人自らの手で戦争責任の所在を明らかにすることが必要だとして、読売新聞が戦後60年となる2005年から1年間にわたって展開した大型連載を電子書籍化したものだ。

記者たちは膨大な資料にあたり、戦史や政治・外交史の専門家らにもインタビューを繰り返して、当時の政治や軍事リーダーたちの政治的・道義的責任を明らかにしていった。戦争体験者の多くが亡くなり、日本という国から戦争の記憶が薄れるなか、世界情勢は緊迫の度合いを増している。過去の記憶と記録を未来に生かすためにも、多くの方に読んでいただきたい1冊だ。

多彩なラインアップ

読売新聞Booksには他にも様々な書籍がラインアップされている。読売新聞の社説を日・英両語で収録した「英語力×時事力」シリーズや、歴史と現代の話題を独自の視点で結びつける「今につながる日本史」シリーズ、さらには鉄道やジャズ喫茶、水中撮影など趣味の世界を取り上げた作品もある。なお、「検証 戦争責任 全一冊」や、平成31年間の芥川賞と直木賞に関連する記事を集めた「平成の芥川賞・直木賞」シリーズといった、記録性の高い一部の書籍については、「読売新聞アーカイブ選書」というレーベルのまま販売している。