夏になると、母に手を引かれて都会の祖母の家へ遊びに行った。じりじりと照りつける日差しの中を横断歩道を渡ると、しゃあしゃあという蝉の声が降り注ぎ、信号機は「通りゃんせ」のメロディーを奏でる。風に揺れる柳の並木道では、噴水のしぶきがまぶしく心地よかった。
家に着けば、大勢の親戚が「遅かったな」「何してたんや」とにぎやかに迎えてくれた。ちゃぶ台を囲んでアイスキャンデーの取り合いをしたり、いとことそろいの浴衣を着てお祭りに出かけたりすることもあった。
扇風機の風と夜中の目覚め
楽しい時間の後は、糊のきいた夏布団で眠りに就く。扇風機の風が心地よく、冷房なしで眠れたのだから、当時は今ほど暑くなかったのだろう。夜中にふと目を覚ますと、皆が眠っている姿が見えて心細くなった。
道路を走るバイクのうなり声、暗闇で鐘を鳴らす柱時計。慣れない家のにおいを感じながら廊下を歩き、濃い麦茶をグラスに注ぐ。大丈夫、朝になれば祖母がトーストを焼いてくれ、裏からいとこも遊びに来る。そう思うととても心強かった。
家は取り壊されても思い出は色あせず
そんな思い出の家は、主の逝去とともに役目を終え、取り壊されることになった。今年もまた夏がやってきた。あの家はもうないが、家に育まれた思い出は今も色あせていない。
宝満紘子(40) 大阪府大阪狭山市



