埼玉県草加市は9月1日、民俗信仰組織「大山講」の道中でお神酒を収納・運搬する道具「神酒枠(みきわく)」4基を、市歴史民俗資料館で初公開する。2基は江戸時代の天保年間に製作され、製作者が明らかなことから文化財として高い価値があるという。
大山講とは
大山講は、商売繁盛や五穀豊穣(ごこくほうじょう)を祈願し、大山阿夫利神社や大山寺(ともに神奈川県伊勢原市)へ参詣するため、地域住民が旅費などを積み立て助け合う信仰組織。江戸時代に普及し、大山阿夫利神社に残る明治年間の資料「開導記」には、旧草加宿と現在の市内の大部分の集落で大山講が組織されていたことが記されている。
神酒枠は、講を代表して参拝に行く人が帰路に現地のお神酒を収納・運搬するために使った、神社の本殿のような形をした箱状の木製道具。浮世絵師・歌川広重の作品「東海道五十三次細見図会」には、担ぐ旅人の姿が描かれている。草加市のほか川越市や熊谷市でも見つかっており、県内で大山講が盛んだったことがうかがえる。
4基の詳細と文化財指定
初公開される神酒枠は、商売繁昌などを祈願する草加宿の人たちが大山講に参詣する際に使用したとされる計4基。草加宿壱丁目の神酒枠は同寸で2基あり、高さ49センチ、奥行き27.5センチ、重さ7.2キロで、神酒樽も残る。草加宿四丁目と五丁目の神酒枠は同寸で各1基、高さ56.2センチ、奥行き36.1センチ、重さ9.2キロ。神酒樽は残っていない。この2基には製作者名が記され、収納箱に天保12年の製作であることが明記されている。
市教委によると、市に神酒枠があるという情報提供があったのは平成25年。それまで長い間、町内会の倉庫などで価値が見極められないまま保存されていたという。市歴史民俗資料館が今年で建造100周年を迎える節目でもあり、市は6月29日付で4基の神酒枠を新規の市指定有形民俗文化財に指定した。
関係者の評価
市の文化財調査報告書(平成26年度)の作成に携わった同市の元都立高教員、堀内仁之さん(81)は「天保年間に製作されたことや製作者の名前が明記された神酒枠は、埼玉県内はもとより、関東近辺でも少ない。大変に貴重な神酒枠」と強調する。大山詣での途中で江ノ島に寄ったという話も伝わっており、信仰に加え、往時の旅の様子もうかがい知ることができる。



