森バジル氏、続編『探偵小石は戻らない』で言語化ブームに一石
森バジル氏、続編で言語化ブームに一石

福岡市在住の作家、森バジルさん(34)が、長編ミステリー小説『探偵小石は戻らない』(小学館)を刊行した。昨年出版して本屋大賞にノミネートされ、ベストセラーになった『探偵小石は恋しない』の続編で、叙述トリックをモチーフにした謎解きの仕掛けで「言語化ブーム」に一石を投じる意欲作だ。

特殊能力で恋心を読み解くヒロイン

ヒロイン小石は、難事件の解決を夢見て福岡市に探偵事務所を構えるミステリーオタク。依頼は不倫や浮気の調査ばかりだが、ある特殊能力によって人の恋情を読み解くことができるため、“色恋案件”を得意としている。今作では、バディを組む青年・蓮杖(れんじょう)や小石の妹、新たに事務所に加わったメンバーらとともに連続毒殺事件の謎解きに巻き込まれる。

物語は、小石が犯人ではないかと名指しされる場面から始まり、過去に戻る形で進行。登場人物たちの絡み合う恋心も読みどころだ。

叙述トリックで「余白の意義」を問う

ミステリー小説を書くつもりはないのかと尋ねられた小石が〈何か書くとしたら、叙述トリックは絶対入れるかな。(中略)読み手を騙(だま)してやりたい〉と答えた言葉が、謎解きの鍵にもなっている。読者の思い込みや誤解を利用する叙述トリックは、作者が「語らない」ことも手法の一つ。

森さんは「『言語化』という言葉がブームのようになり、何でも言葉にすべきだというような風潮があるが、無理やり言語化することでそぎ落とされてしまうものもある。言葉にできない余白の意義を考えるような作品にしたかった」と語る。

真相にたどり着くと、物語が〈現実ではさ、過不足なく情報を提示することなんてできないじゃん。(中略)言葉で表現できるのはそのほんの一部〉という小石の思いに収斂(しゅうれん)されていることに気付かされる。「正論きらーい」という小石の口癖にも、「議論や言葉にできない気持ちの表現のような部分をもっと楽しんでもいいのではないか」という森さんの問題意識がにじむ。