永井隆「長崎の鐘」岩波文庫化 青来有一さんが解説で祈りと怒り考察
永井隆「長崎の鐘」岩波文庫化 青来有一さんが解説で考察

長崎原爆で被爆した医師、永井隆(1908〜51年)の手記「長崎の鐘」が6月、岩波文庫になった。長崎市在住の作家、青来有一さん(67)が解説を執筆し、「原爆による死は人類の罪の償い」という永井の主張を巡る「長崎の複雑な様相」について考察している。

永井隆の生涯と「長崎の鐘」

永井は原爆で重傷を負いながらも医療隊を組織して被爆者の治療に奔走。妻を原爆で亡くし、白血病に苦しみながら、43歳で亡くなるまで「この子を残して」など多くの著作を発表し、「浦上の聖者」と呼ばれた。「長崎の鐘」を基にした同名の歌は藤山一郎が歌って大ヒットし、映画にもなった。

「祈り」と「怒り」を巡る論争

「長崎の鐘」には、原爆投下の3か月後、浦上天主堂で行われた慰霊祭で永井が述べたとされる弔辞が記されている。「世界大戦争という人類の罪悪の償いとして日本唯一の聖地浦上が犠牲の祭壇に屠られ燃やさるべき潔き羔として選ばれたのではないでしょうか?」という内容だ。

長崎医科大で永井の下で働いたこともある被爆医師の秋月辰一郎は、こうした考えに「ついていけないものを持っている」と1966年の著書に記した。長崎の詩人、山田かんは雑誌で「あたかも、原爆は信仰教理を確かめるがために落されたというような荒唐無稽な感想を書きちらした」と非難。長崎大教授などを務めた高橋真司氏は、戦争を始めた日本の指導者と、非戦闘員まで原爆で無差別に殺戮したアメリカの指導者の双方の責任を免除する見解だと批判した。

青来有一さんの小説と解説

青来さんは2017年の小説「小指が燃える」に永井を登場させている。同作の主人公は、青来さんを思わせる作家。その主人公が永井と同じようなことを考えているとして、長崎で被爆した作家、林京子がモデルの「Hさん」は激しく非難する。