加齢による認知・身体機能の衰えでスマートフォンの操作が難しくなる「スマホリタイア」が確認され、運転免許返納と同様に対策が必要になっている。遠距離で暮らす老親との連絡手段に不安を抱える子世代が、代替としてテレビ電話サービスを利用するケースが増えている。
独居高齢者の6人に1人がスマホリタイア組と推測
Wi-Fi不要のテレビ電話サービス「ちかく」を展開するチカク(東京都渋谷区)によると、独居高齢者の約6人に1人がスマホリタイア組と推測される。8月に、スマホを利用する(していた)1人暮らしの親(70~90代)を持つ男女198人を調査したところ、34人がスマホによる親との連絡が困難または諦めたと回答した。
原因の1位は物忘れなど認知機能の低下で62%、目や耳の衰え44%、手指操作が難しくなった35%と続き、運転免許返納理由とも重なる。梶原健司社長(50)は「高齢者がスマホを使いづらくなるのはデジタル機器に対する知識不足、リテラシーの問題だと認識されているが、老化現象により諦めざるをえなくなる実態が浮かんだ。節目は80代と過半数が答えている」と話す。
今はスマホを使いこなしている団塊世代(昭和22~24年生まれ)も来年から順次80代に突入する。
毎日のテレビ電話が「命綱」に
パート勤務の女性(52)は、都内のマンションから静岡県熱海市の一軒家で1人暮らしの母親(87)にテレビ電話をかける。娘のスマホ画面に、リビングにいる母親と白い小型犬が映し出される。「ちーちゃん(犬)も映ってるよ」と楽しげに会話が弾む。
母親は手の震えでスマホのボタンを正確に押せず、電話に出ないことが増え、近所の人に安否確認を頼んだら家の中で倒れていたこともあった。2年前に契約して以来、毎日テレビ電話で話す。親には知らせずにカメラで室内をうかがう機能も使い、「塗り絵をしている姿などを見て安心。母は社交的で私の知らない人を家に上げていることもあるが、会話の内容からご近所さんで大丈夫などと判断。ヘルパーさんや新しい知り合いの来訪時間を知らせてもらって怪しくないか、こっそり様子を確認しています。生活に欠かせない命綱で、通信不良で使えなくなったときには本当に困った」と話す。
母親は「娘がこの機械を入れてくれて不安が減り、毎日楽しく暮らせています。思い出の多いこの家から離れたくない。90までは頑張りたい」と語る。
利用者1万人突破、介護や医療との連携も視野
梶原社長はアップルジャパンを経て平成26年にチカクを創業。孫の写真や動画を祖父母宅のテレビに送信するサービス「まごチャンネル」でセコムと協業し、見守り機能を強化した。令和6年にNTTドコモとの協業で始まったテレビ電話サービスは、利用者1万人を突破。家をデザインした端末にSIMカードとレンズやマイクを搭載し、昨年9月にレンタルプラン(月額3278円)を始めると契約者が倍増した。
高齢者向けサービスゆえ解約も不可避で、死亡以外の理由は老人ホームへの入所が多く、見守りカメラ機能の持ち込みを施設側に断られるケースが多い。一方でホームでの利用が認められた親が「これがあれば1人で暮らせると、自宅に戻った」との報告も複数寄せられている。
梶原社長は「わが家に住み続けられる〝希望の道具〟にもなりえるのか」とし、「今後は介護や医療との連携を見据えた機能を追加し、高齢者のQOL(生活の質)を上げていきたい」と目標を示した。子供と毎日顔を合わせて相談事もできる「遠距離同居」の概念も生まれている。



