ソフトバンク、Starlink直結スマホで国内初の衛星通信実験に成功
ソフトバンクは2025年3月、米スペースX社が運営する衛星コンステレーション「Starlink」の衛星と、一般の市販スマートフォンが直接通信できる「Direct to Cell」サービスの実証実験に国内で初めて成功したと発表した。この実験は、山間部や海上など、これまで携帯電話の基地局が届かなかったエリアでも、音声通話やデータ通信を可能にすることを目指している。
実験の詳細と成果
実験は2025年2月に実施され、ソフトバンクの社屋内に設置した実験用端末から、上空約550kmを周回するStarlink衛星に向けて信号を送信。その信号は衛星を経由して、同じく社屋内の別の端末に届けられ、双方向の音声通話とデータ通信に成功した。使用した端末は、一般的なスマートフォンに搭載されている通信チップそのもので、特別なアンテナや改造は一切必要なかったという。
ソフトバンクは今回の実験成功について、「従来の衛星電話のように専用端末を必要とせず、誰もが持っているスマートフォンで衛星通信が利用できる可能性を示した」とコメントしている。また、通信速度や遅延時間などの具体的な性能数値については、現時点では非公開としているが、実用化に向けては「まずはテキストメッセージや音声通話から始め、将来的にはデータ通信にも対応したい」としている。
Direct to Cellサービスの仕組みと意義
Direct to Cellは、スペースXが開発中の技術で、Starlink衛星に搭載された「eNodeB」と呼ばれる小型基地局機能を利用する。通常のスマートフォンは、地上の基地局と通信するが、この技術では衛星がその基地局の役割を果たす。これにより、山間部や離島、海上、さらには災害時に基地局が破壊されたエリアでも、携帯電話が使えるようになる。
現在、日本の携帯電話のエリアカバー率は人口ベースで99%以上とされているが、面積ベースではまだ多くの不感地帯が存在する。ソフトバンクによれば、国土の約70%が山林であり、また周囲を海に囲まれている日本では、こうしたエリアでの通信確保は重要な課題だ。特に、漁業従事者や登山者、建設現場などでの需要が見込まれる。
2025年内のサービス開始を目指す
ソフトバンクは、2025年内を目途にDirect to Cellサービスの商用化を目指すと発表している。ただし、実用化には規制当局の認可や、スペースXとの連携強化、さらに衛星の打ち上げ数増加が必要となる。現在、Starlinkは約7,000基の衛星を運用しているが、Direct to Cell対応衛星はまだ一部にとどまる。スペースXは2025年中に数百基の対応衛星を追加打ち上げる計画で、ソフトバンクはそれに合わせてサービスを開始したい考えだ。
また、ソフトバンクはこの技術を災害時の緊急通信手段としても活用する方針。能登半島地震などの教訓を踏まえ、大規模災害時に携帯電話網が寸断された場合でも、衛星経由で安否確認や情報伝達ができる環境を整えるとしている。
国内外の競合と今後の展望
衛星とスマホの直接通信を巡っては、米AST SpaceMobile社も同様のサービスを計画しており、AT&Tやベライゾンなどと提携している。また、米T-MobileはスペースXとの提携を2022年に発表しており、ソフトバンクの実験はそれに続くものだ。日本ではKDDIも、AST SpaceMobileとの協業を発表しており、競争が激化している。
ソフトバンクの宮内謙副社長は、「Direct to Cellは、5Gや6G時代のユニバーサルカバレッジを実現する重要な技術。日本中どこでも、誰でもスマホが使える未来を実現したい」と述べている。



