2026年4月10日、カリフォルニア沖に着水するオリオン宇宙船(画像:NASA / Bill Ingalls)。アルテミス2号ミッションでは、打ち上げから約1時間後にトイレの故障警告灯が点滅するトラブルが発生した。この問題は、宇宙飛行士らによるその場での修理で解決されたが、微小重力環境下での排泄処理という、宇宙開発における長年の課題を改めて浮き彫りにした。
微小重力下のトイレ設計の難しさ
地球と月を往復する宇宙船内は、重力がほとんどない微小重力環境だ。仮に、家庭にあるトイレと同じ感覚で便座に腰掛けようとしても、飛行士はお尻の弾力で弾き返されて宙に浮いてしまう。そのため、便座まわりには身体をしっかり押し付けるための手すりと、足を固定するスリッパのような器具が備え付けられている。また、便座の蓋を開けると内部の吸引ファンが勢いよく回り、固形物をトイレ内へ吸い込む。
この吸引ファンは、ISSまでのバージョンでは固形物と液体を別々に制御していたが、オリオン宇宙船のバージョンでは軽量小型化のため、ひとつの電動機で制御されるようになり、大小同時に用を足せるようになった。ちなみに、オリオンのトイレでは固形物は便座内のバッグに収まるようになっており、用が済めばしっかりと口を閉じ、トイレの床下スペースに押し込んで地球に帰還するまで保管する仕組みとなっている。一方、液体は専用の容器に蓄えられ、1日に数回、オリオン宇宙船のベントシステムを通じて宇宙空間へ放出される。
謎の警告ランプと飛行士の対応
アルテミス2号ミッションの打ち上げから約1時間後、宇宙飛行士のひとり、クリスティーナ・コック氏は、NASAの地上管制センターにトイレに関する故障警告灯が点滅していると報告した。10日間のミッションに旅立ったばかりの飛行士たちにとって、これは大問題だった。もしトイレがまったく使えない状態なら、これから10日も続くミッションの間、飛行士はアポロ時代以前のように無重力のなか、専用のビニールパックをテープでお尻に貼り付けて用を足さなければならない。
アポロの飛行士が使用したビニールパック(画像:NASA)。幸い、コック氏らはトイレの設計に詳しい地上のエンジニアと連携し、警告灯の原因を特定。ファンの制御回路に一時的な不具合が生じていたことが判明し、簡単なリセット操作で復旧に成功した。その後、ミッション中にトイレのトラブルは再発しなかったという。
宇宙トイレの進化と今後の課題
今回のトラブルは、宇宙船のトイレがいかに繊細なシステムであるかを示している。特に、月や火星への長期ミッションでは、トイレの信頼性が乗組員の健康と士気に直結する。NASAは、アルテミス計画を通じて得られた知見を基に、さらなる改良を進める方針だ。



