楽天・AST連合「日本版スターリンク」J-LEOプロジェクトの課題と展望
楽天・AST連合「日本版スターリンク」J-LEOの課題

2026年6月30日、総務省が進める「自律性確保に向けた低軌道衛星インフラ整備事業(J-LEO)」において、RASTが間接補助事業者として採択された。RASTは楽天グループと米衛星通信事業者ASTスペースモバイルの合弁会社であり、ASTは独自の低軌道通信衛星コンステレーションによるDTC(衛星ダイレクト通信)サービスを計画している。DTCは衛星と携帯電話が直接つながる画期的なサービスで、基本的に「圏外」がなくなることが期待されている。楽天モバイルはこの仕組みを活用し、年内に「Rakuten最強衛星サービス」を開始する予定だ。

J-LEO事業の概要と条件

J-LEO事業は、日本国内で衛星コンステレーションによるDTCの展開を目指すもので、災害時のローミングサービスを含め、山間部や離島でも利用可能とすることが求められている。具体的な条件として、2029年3月までに1日の約7割の時間(16時間以上)でDTCによるビデオ通話を可能にすること、日本国内に衛星管制施設を設置することなどが挙げられる。DTCは多数の通信衛星の展開が必須であるため、海外事業者との提携が現実的とみられていたが、実際に楽天とASTが連携するRASTがJ-LEOに採択された。

ASTのBlueBird衛星計画の変貌

ASTでは現在展開中の通信衛星「BlueBird」シリーズの計画が2026年に入って大きく変貌している。3月に国際電気通信連合(ITU)に提出された衛星の軌道・周波数計画から、まだ明らかにされていないJ-LEOの方向性を読み解くことができる。BlueBird衛星は当初、小型衛星からスタートする計画だったが、現在はより大型の衛星にシフトしており、これにより通信容量やカバレッジが向上する可能性がある。一方で、衛星の大型化は打ち上げコストの増加やスケジュールの遅延リスクを伴う。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

100~130機前後で全国一律サービス実現か

J-LEOプロジェクトでは、約100~130機の低軌道衛星を展開することで、日本全国で一律のサービスを実現できると見込まれている。この衛星数は、SpaceXのスターリンク(約6000機)と比較して少ないが、ASTの衛星は大型で高性能なため、少ない機数でも同等のカバレッジを達成できる可能性がある。ただし、この目標を達成するためには、衛星の製造と打ち上げを効率的に進める必要がある。

ロケット打ち上げ確度が懸念材料に

J-LEOプロジェクトの最大の課題の一つは、ロケット打ち上げの確度である。ASTは現在、BlueBird衛星の打ち上げにSpaceXのファルコン9ロケットを使用しているが、打ち上げスケジュールの遅延や打ち上げ能力の制約が懸念される。また、日本国内のロケット(H3やイプシロンSなど)の活用も検討されているが、これらのロケットはまだ商業打ち上げの実績が限られている。総務省はJ-LEO事業に1500億円の補助金を投入するが、打ち上げ確度の低さがプロジェクト全体のリスクとなっている。

DTCサービスの競争環境

日本版スターリンクは、既存の衛星通信サービス(スターリンクやKDDIの衛星電話など)と競合する可能性がある。特に、災害時のローミングサービスは、NTTドコモやKDDIなどの携帯キャリアとの連携が不可欠だ。楽天モバイルは自社の携帯ネットワークとDTCを組み合わせることで、差別化を図る方針だが、他社も同様のサービスを検討している。例えば、SpaceXとT-MobileはDTCサービス「Direct to Cell」を2024年に開始しており、日本でもKDDIと連携する可能性がある。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ

今後の展望と課題

J-LEOプロジェクトは、2029年3月までのサービス開始を目指しているが、衛星の製造・打ち上げ・管制施設の整備など、多くの課題が残されている。特に、衛星の軌道投入後の運用や、周波数調整、国際的な協力体制の構築が重要となる。楽天とASTの連携が成功するかどうかは、今後の打ち上げスケジュールや技術的な実証結果にかかっている。また、総務省の補助金事業としての透明性や、国民へのサービスの提供方法についても、今後の議論が必要だ。