北海道に本社を置くITソリューション企業のHBAは、2026年および2027年に入社予定のベトナム人学生4人を札幌に招き、3泊4日の日程で内定者研修を実施した。研修2日目の午後には「生成AI研修発表会」と題したプレゼンテーションの機会が設けられ、学生たちが日本語でAIに関する研究成果を発表した。
日本語で挑んだ研究成果の発表
「初めまして、私はグエンと申します。ハノイ工科大学を卒業しました。本日は発表の機会をいただき、ありがとうございます」
日本語での挨拶の後、グエンさんは会社から課題として与えられた『知識をリンクさせ、思考を加速する The LLM-Wiki Second Brain Architecture(セカンドブレイン構築)』と題する研究成果の発表を始めた。プレゼンテーションもすべて日本語で行われた。まもなく同僚としてともに働く日本のエンジニアとのコミュニケーションには日本語が欠かせないため、研究と並行して日本語も学習してきたという。
プレゼンテーションを終えると、現役のエンジニアから「マシンやサーバーの性能が上がったら、さらに処理する量は増えるのか」など、実際の業務に即した質問が飛んだ。それらへの回答を経て、1人あたり約30分の発表が終了した。
採用の背景と今後の展望
4人が入社後に所属するHBAイノベーション推進室の長濱立朗室長は、発表を「まとめ方が素晴らしかった。課題からどういうプロセスで、最終的なデモに至る結論を導き出したのかが、非常に分かりやすかった。(実際の)業務に入ってからも生かしてほしい」と期待を込めて総評した。
2025年7月、HBAの白幡一雄社長らがベトナムを視察したことをきっかけに、現地の学生を対象とした採用が本格的に動き始めた。HBAではこれまでも業務の一部をベトナム企業に委託(オフショア)してきた経緯があり、現地のIT人材に対する信頼感もあったという。現地で社員募集を開始し、応募者の中から書類選考を経て、面接で人柄や意欲、日本への対応力を確認。昨年10月に4人が内定した。
4人は2026年および2027年に入社予定。今年2月にはHBAの社員がベトナムに赴き、内定者対象の“保護者会”を開催し、家族と離れて暮らすことへの不安の解消にも取り組んだ。
採用に関わってきたHBA経営企画本部経営企画室経営企画グループ主任の野田龍之介さんは「技術力に関しては、非常に優秀な方ばかりで、(面接試験に臨んだ応募者に)ほぼ差はありませんでした。皆さん朝から晩まで勉強・研究をしているような学生で、業務でAIを使うイノベーション推進室に合った人材を選びました」と話す。
研修内容と参加者の声
今回の研修では、グエンさんが「セカンドブレイン構築」、チャンさんが「RAG(検索拡張生成:信頼できる情報を基に生成AIで回答を生成する手段)精度最適化」、ダットさんが「テスト自動化環境の構築」、ズイさんが「OpenClawによるAIオーケストレーション」というAI関連の課題に挑み、いずれも高い評価を得た。
「私たちIT企業にとっても、海外の優秀な人材と共に働く機会は今後ますます増えていきます。将来を見据えて今からしっかりと準備し、毎年少しずつ採用実績を重ねていきたい」と野田主任は語る。エンジニアが不足してからあわてて採用を始めるのではなく、“海外からやってきたエンジニアと一緒に働くことが当然である”という社内の空気を早期に醸成し、“その時”が来た際に、スムーズに業務をシェアできる環境づくりを進めることも、今回のチャレンジの理由だ。
3泊4日の研修中には、入社後の給与や会社のサポート体制、日本のビジネスマナーなどについての説明も行われ、参加した4人全員が「日本で働くイメージができた」とアンケートに回答した。
ダットさんは、会社や札幌市内の見学を通じて、入社後の仕事や生活を具体的にイメージできたという。また、日本とベトナムの違いについて、「日本は、お客様一人ひとりに対して丁寧で細やかな対応をしており、相手の立場に立って行動する姿勢がとても印象的でした」と話した。
一方、チャンさんは、日本の環境について「徐々に慣れてきました」と話し、研修中にさまざまな日本の食を楽しんだことも振り返った。ズイさんは、日本のビジネスマナーやルールに沿った仕事の進め方が印象に残ったという。4人にとって、日本での仕事や生活をより身近に感じる機会となったようだ。
野田主任は、外国人社員と働くことが当たり前になる将来を見据え、「その時にアレルギー反応を起こさないような会社の土台を、今からしっかりと作り上げていきたい」と語る。さらに、HBAで日本のビジネスを経験した人材がベトナムに戻り、現地の技術者とともに新たな拠点をつくる将来構想にも触れ、「一緒にこの会社をもっと大きくしていけたら、この上ない幸せです」と締めくくった。



