ガチャガチャの舞台裏に迫る展覧会、清澄白河で開催中
ガチャガチャの舞台裏に迫る展覧会、清澄白河で開催

街なかや駅、空港でも見かけるようになったカプセルトイ、いわゆる「ガチャガチャ」。何が出てくるかわからないワクワク感が楽しめるこのアイテムは、いまや子どもの遊びを超え、大人や訪日外国人も夢中になるひとつのカルチャーだ。膨大な数の新商品が発売されるなか、ひとつひとつのアイテムにはクリエイターや企画者の情熱が詰め込まれている。

コイン数枚で楽しめる手のひらサイズのカプセルトイ。その企画開発の舞台裏に迫るアート展『ガチャガチャ、できるまで展~ガチャガチャの「創造」と「再現」の世界~』が、2026年7月8日から8月2日まで、東京・清澄白河の古民家カフェ「no mark.Cafe」にて開催されている。

展示のきっかけは「カフェ猫フィギュア総選挙」

会場には、企画書や試作品など、普段は見ることのできない制作資料が並ぶ。企画したのは、自身もカプセルトイの商品開発を経験した、「no mark.Cafe」を運営するPLAN35/マーケティング支援を行う照應堂、両社の代表取締役を務める竹井慎平氏だ。

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竹井氏は「ここ清澄白河には、現代アートを専門にした東京都現代美術館があります。そういった土壌があるなかで、もっと敷居を低く、カフェで気軽にアートに触れられる場をつくりたかったんです」と語る。『ガチャガチャ、できるまで展』の会場である「no mark.Cafe」では、これまでもさまざまな展示企画を「CAFE DE ART」として実験的に実施してきた。その根底にあるのは、「アートをもっと身近にしたい」という竹井氏の想いだ。

今回テーマに選んだのは“ガチャガチャ”。きっかけは、過去に「no mark.Cafe」で開催した「カフェ猫フィギュア総選挙」で作ったフィギュア「勝手に牛乳を注ぐ猫」のカプセルトイ化を行ったことだという。実際に企画開発をしてみると、想像以上に多くの工程を乗り越える必要があった。そしてメーカーやクリエイターのものづくりへの熱量に驚かされたという。

ユーザーの知らない「できるまで」の世界

今回の展示では、完成品と合わせて、元となった原作や試作サンプル、設定資料を並べて公開している。ラインナップは、竹井氏が手掛けた「勝手に牛乳を注ぐ猫」をはじめ、SNSで話題になったアイテムがずらり。日本ガチャガチャ協会の協力のもと、カプセルトイメーカー各社やクリエイターが垣根を越えて参加し、メーカーの枠を超えた全9アイテムが一堂に会する展示会だ。

出展作品は「勝手に牛乳を注ぐ猫」「神獣ベコたち 東の神々編」「コーン約指輪」「CAPMO(カプモ)」「モザイヌ」「毛玉ビーム」「うちの子のけだまだま」「旭精工 1/18 AC-5300 両替機」「ぴちぴち鮮魚根付」(敬称略/順不同)。動物やキャラクターのフィギュアから、実在する両替機をミニチュア化した「旭精工 1/18 AC-5300 両替機」(トイズキャビン)や、光や音が鳴る「毛玉ビーム」(ケンエレファント)といったギミック付きの商品まで、多岐にわたる。

竹井氏は「ガチャガチャと一口に言っても、フィギュアやぬいぐるみから、現実に存在するもののミニチュアやギミックがあるものなど、それぞれ企画や開発がどう違うのか、僕自身が気になったんです」と語る。ユーザーの手元に届く時は、どれも丸いカプセルに入った完成品だが、商品によって解決すべき課題はまったく異なる。

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試作品に見る「狂気」のこだわり

展示のきっかけとなったカプセルトイ「勝手に牛乳を注ぐ猫」は、2025年2月に「no mark.Cafe」で開催した「カフェ猫フィギュア総選挙」で作ったフィギュアがもとになっている。PLAN35に所属するカフェ猫アーティスト集団「にょ」に猫をモチーフにしたフィギュアを2つ制作してもらい、来場者投票による“総選挙”を実施。ひとつはフェルメールの絵画『牛乳を注ぐ女』をモチーフにした「勝手に牛乳を注ぐ猫」。もうひとつは映画『ミッション:インポッシブル』の宙づりシーンをオマージュした「コーヒーにダイブ猫」だ。いずれもコーヒーにいたずらを仕掛けるカフェらしいフィギュアで、勝利したのは「勝手に牛乳を注ぐ猫」だった。

竹井氏は「勝ったからには何かしないといけないなと。フィギュアを量産して、カフェにあるガチャガチャのマシンで売ろうかなと考えていたんです」と振り返る。当初は「500個くらいで」と考えていたが、少量生産ではコストが合わず、1個あたりの販売価格が1400円近くに。価格で悩んでいたところ、カプセルトイメーカー「ブルーマウンテン」から商品化のオファーを受け、竹井氏は本格的なカプセルトイづくりの世界に飛び込んだ。

ブルーマウンテンと組み、商品として採算を成立させるため、「勝手に牛乳を注ぐ猫」は全国流通のカプセルトイとして大きなロットで生産・展開されることになった。しかし竹井氏がさらに驚いたのは、商品化に必要な作業量だったという。「最初は原型があるんだから、そのまま作ればいいと思っていたんです(笑)。サンプルが届くたび、表情や輪郭、パーツのサイズを確認して修正を依頼するのですが、こちらが出した指示と微妙に違っていて……。指定と柄が違っていたり、鼻の色が塗られている面積が広すぎたりとか。にょのメンバーであるhenttecoさんやブルーマウンテンさんと一緒に、本当に微調整の連続でしたね」

また、カプセルトイでは複数種類のラインナップを用意するケースが多く、今回も6種類のカラーバリエーションを制作した。どのような柄にするのかを考え、それぞれの色指定をしてサンプルの作成とチェックを何度も重ねたと竹井氏。完成品だけを見たら気付かないような差かもしれないが、そのわずかな違いが仕上がりを大きく左右する。

そうして完成した「勝手に牛乳を注ぐ猫」は、全国の売り場へ。最初は売れているかどうかの実感がなかったそうだが、「秋田や札幌のお店が運営しているXで『売り切れました』というポストがされたのを見て、本当に全国で売られているんだなと実感しました」と笑顔を見せる。販売は好調で、第2弾の企画もすでに進行しているという。

手のひらサイズに詰まった作り手たちの熱量

竹井氏は、カプセルトイ市場の拡大とともに、その価値も変化していると感じている。「ガチャガチャの市場規模は2,000億円を超える規模となり、インバウンド需要も高い。昔は子どもが100円くらいで遊ぶもの、というイメージでしたが、現在では文化になりつつあるように感じます」

だからこそ、完成品だけではなく、その背景にいるクリエイターやメーカーの仕事にも目を向けてほしいという。手のひらに収まる小さなカプセルトイの裏には、企画者、原型師、メーカー、工場担当者たちの膨大な試行錯誤がある。

「ガチャガチャを楽しまれる方に、その裏側がどうなっているのかを知ってほしいですね。ガチャガチャは、手のひらの中に収まる“狂気”だと私は思っていますし、そこが面白いところ。クリエイターもメーカーも、そこに集中されているからこそ、年々クオリティの高さが上がっているんだろうなと。この展示を通して、ぜひ見ていただきたいです」

『ガチャガチャ、できるまで展~ガチャガチャの「創造」と「再現」の世界~』は、普段何気なく回しているカプセルトイがどれほどの手間と情熱を経て生まれているのか、つくり手たちの熱量を知る貴重な機会だ。展示を見たあとには、きっとハンドルを回して手に取ったときの目線も少し変わっているはずだ。

イベント概要

会場:no mark.Cafe(東京都江東区白河3-7-3)
アクセス:清澄白河駅B2出口徒歩4分
営業時間:10:00-18:00
定休日:月曜・火曜
開催期間:2026年7月8日~8月2日