50代の上司が、Z世代の社員から送られた社内チャットの絵文字に困惑する事例が増えている。ビジネスシーンにおける絵文字やスタンプの使用は、世代や個人によって感じ方が大きく異なり、上司側は「カジュアルすぎる」と感じる一方、若手社員は「親しみやすさの表現」として使うことが多い。このギャップは、職場のコミュニケーションに新たな課題を投げかけている。
大学生へのアンケートで見えた絵文字の受け止め方
成蹊大学特別客員教授でITジャーナリストの高橋暁子氏は、自身の講義で受講生125人を対象に、コミュニケーションにおけるスタンプ利用についてアンケートを実施した。「先輩、先生、店長などへメッセージを送る場合、絵文字やスタンプを使うのはありだと思いますか」という質問に対し、「ありだし、使っている」が16.8%、「なしだし、使わない」が18.4%、「相手による」が63.4%という結果になった。多くの学生が、相手との関係性や状況に応じて使い分けている実態が浮き彫りになった。
一方、年下や目下の相手から絵文字を使われることについては、「後輩、部下などからメッセージをもらう場合、絵文字やスタンプを使われるのはありですか」との質問に、「ありだし、気にならない」が64.8%と大多数を占めた。「相手による」が32.8%、「なしだし、やめてほしい」はわずか2.4%にとどまった。この結果から、年齢が若いほど年下からの絵文字を受け入れやすい傾向があることがわかる。ただし、年上の相手に対しては、相手の価値観を考慮して慎重に使う学生が多いようだ。
ビジネスチャットの普及がもたらす変化
こうした世代間ギャップの背景には、社内コミュニケーションにおけるビジネスチャットの利用増加がある。日経BP BPコンサルティングが実施した「企業のビジネスチャット利用実態調査2024」(2024年11月)によると、勤務先へのビジネスチャット導入率は51.1%と半数を超えた。メインで利用しているツールは「Microsoft Teams」が67.8%で最多、以下「Google Chat」7.8%、「Slack」7.5%、「LINE WORKS」4.9%と続く。
大人世代、特に50代以上の管理職層は、これまでのビジネスコミュニケーションがメール中心だった影響から、「絵文字やスタンプはカジュアルすぎてビジネスにふさわしくない」という価値観を持つことが多い。しかし、若い世代はLINEやSNSで育ったため、絵文字やスタンプを感情表現や親しみのツールとして自然に使う。この認識のずれが、職場での摩擦を生む原因となっている。
大学生世代の絵文字感覚
高橋氏は、大学生世代が絵文字やスタンプに抵抗がないのは、彼らがデジタルネイティブであり、日常的なコミュニケーションにこれらのツールが浸透しているためだと指摘する。実際、アンケートでは年下からの絵文字を「あり」とする回答が64.8%と高く、若い世代ほど受け入れやすい傾向が確認された。一方で、年上の相手に対しては「相手による」が63.4%と慎重な姿勢が見られ、世代間の相互理解が重要であることを示している。
職場でのコミュニケーションを円滑にするためには、上司と若手社員の間で、絵文字やスタンプの使用に関する暗黙のルールを共有することが有効かもしれない。例えば、フォーマルな報告には使わない、親しい間柄では許容するなど、ケースバイケースの判断が求められる。ビジネスチャットが主流となる中で、世代を超えた新しいコミュニケーションの形を模索する必要がある。



