元オリンピック選手の中村恒一さん(60代、仮名)が、SNSをきっかけとしたロマンス詐欺により、わずか1カ月で2500万円を騙し取られた実態を東洋経済の取材で明かした。「自分は冷静に判断できる人間という自負があった。それでもだまされた」と語る中村さんは、1992年バルセロナ五輪にボブスレー競技で出場した元オリンピアンである。
多才なアスリート経歴と人間分析のプロ
中村さんのスポーツ経歴は多彩だ。18歳でレスリング国体(少年の部)優勝、20歳で全日本選手権4位入賞。その後角界に転身し、21歳で大相撲名古屋場所序の口で7戦全勝(優勝決定戦敗退)を果たした。23歳ではカヌー全日本選手権(10000m)で6位入賞。28歳でボブスレー日本代表として五輪出場を達成した。
現役引退後はボブスレー日本代表チームのコーチ・監督を歴任し、1998年長野五輪ではヘッドコーチを務めた。アテネ五輪(2004年)金メダリストの野口みずき選手が所属したチームでは渉外担当を担当。早稲田大学大学院でスポーツ科学修士を取得し、近年まで上場企業の陸上競技部シニアマネジャーを務めていた。
詐欺の端緒は恩師を装った共通友達
詐欺のきっかけは2023年5月11日。中村さんのFacebookに「酒井清子」を名乗る人物から友達申請が届いた。普段なら削除するが、共通の友達に元レスリング指導者の恩師がいたため承認した。「信頼の最上位にいる恩師と彼女は友達だった。削除するのをやめた」と振り返る。
酒井清子は中国籍で母親が日本人と自称。Facebookプロフィールには海外生活を思わせる写真が並び、メッセージ交換を重ねるうちにLINEでのやり取りに発展した。
1カ月で2500万円を失うまで
中村さんは「彼女をもっと知りたいと思うようになっていた」と当時を語る。その後、話題に「金融の専門家」が登場。投資話を持ちかけられ、冷静な判断ができずに2500万円を振り込んでしまった。被害届を警察に提出したが、金銭の回収は困難な状況だ。
国際詐欺グループによる手口は巧妙で、人間分析のプロである中村さんですら騙された。インタビューは4回に分けて掲載される。



