職場で若手社員が上司を論理で追い詰める「ロジハラ(論理的ハラスメント)」が問題視されている。知識量では部下が勝っていても、意思決定の責任は上司にある。こうした状況で、上司が萎縮し、職場のコミュニケーションが損なわれるケースが増えている。
ロジハラの背景と課題
日本メンタルアップ支援機構代表理事の大野萌子氏は、ロジハラが起こる背景には、知識差、価値観の違い、コミュニケーションの癖、承認欲求、役割の曖昧さなど、複数の要因が絡み合っていると指摘する。そのため、どちらか一方を責めても問題は解決しない。
大野氏は「双方向ロジハラ時代には『勝ち負け』ではなく『合意形成』が必要」と強調する。合意形成とは、相手の立場を理解し、事実を共有し、目的をそろえ、最適な選択肢を一緒に探すプロセスだ。
役割とルールの明確化
対策の第一歩は、会話のルールを明確にすること。大野氏は「意見は歓迎するが、最終判断は私が行う」「議論は事実と目的に基づいて行う」「人格批判は禁止する」といった役割とルールの明文化が、ロジハラを防ぐ土台になると述べる。
組織として「仕組み化」に取り組むことが不可欠だ。ロジハラは個人の性格の問題ではなく、組織の構造が生む現象であるため、組織としての対策が必要となる。
具体的な組織対策
大野氏は、以下の仕組み化を提言している。
- 1on1のあり方の教育と徹底(形式的ではなく、相互理解の場として機能させる)
- 議事録文化の定着(音声で文字起こしが簡単にできる)
- ハラスメント相談窓口の強化(利用する側のハードルを下げる)
- AI・ITリテラシー研修の双方向化(個人任せにせずに教育する。教育の場を利用して相互コミュニケーションも生まれる)
こうした仕組みが整うことで、ロジハラは自然と減少するという。
共創と協働の視点
大野氏は「論破ではなく、共創。支配ではなく、協働。上下ではなく、役割。この視点が、双方向ロジハラ時代のコミュニケーションを支える基盤になる」と述べる。
ロジハラは、誰もが加害者にも被害者にもなりえる。だからこそ、「相手を論破する」ではなく「一緒に前に進む」ための会話が求められている。職場のコミュニケーションは、勝者と敗者を決める場ではなく、より良い成果を生み出すための協働の場だ。その原点に立ち返ることが、ロジハラを超えていく第一歩となる。



