SNSや動画で情報発信する料理家が増え、レシピにアクセスしやすい時代になった。しかし、クックパッドの新機能をめぐり、レシピの著作権や「料理の手順」の価値について波紋が広がっている。作家で生活史研究家の阿古真理氏が、レシピの本質と時代の変化を考察する。
レシピの著作権と家庭料理の問題
本来、家庭料理のレシピは料理を作る際の目安であり、家庭でまったく同じように再現する必要はない。鍋や火力、素材の質が違うなどの事情で、完全な再現は難しい。応用力がある人は、素材を変えたり味つけを調整したりして、自分の味にアレンジしているだろう。しかし、レシピを著作物とみなすと、こうした変更が著作権法違反になる可能性がある。
阿古氏は「レシピを著作物とするナンセンスさ」を指摘する。家庭料理は食べる人のためにある。著作権法違反でアレンジが禁止されたり、作るたびに費用が発生したりすれば、利用者は激減し、料理家や料理メディアの仕事は成立しなくなるという。
レシピの類似性とパクリ問題
著作権がないため盗用は可能だが、パクリ問題が生じるのは、レシピが似通った内容になりがちだからでもある。調理は科学であり、物質の変化の法則から外れることはできない。基礎的な手順を守れば作れるため、料理家が自分のオリジナルと思ったアイデアが、実は他の人も思いついていたり、過去に使われていたりするケースはあり得る。
高級レストランの料理は、素人が真似できない高い技術や斬新な発想が要求される。レシピを利用するのは厨房内の料理人たちで、本人だけに秘匿されたレシピや門外不出のレシピも存在する。一方、家庭料理のレシピを利用するのは一般の人だ。家庭料理は、手間やコストをあまりかけず、栄養バランスが整い、毎日食べても飽きないことが求められる。できるだけ再現しやすく、「作りたい」と思ってもらう必要がある。こうした制約の中で、レシピが似通ってくるのは必然と言える。
時代の変化とレシピの役割
世の中には「料理家は特に必要がない職業」「レシピは必要なのか」と言う人もいる。昭和時代は、あり合わせで料理するなど、レシピに頼らず日々の食事を作る台所の担い手は珍しくなかった。しかし、平成以降はグルメ化が進み、世界各国の料理やそのアレンジが加わり、食べたい料理のバリエーションが増えた。食がトレンド化し、目新しい料理を食べたいと考える人も増加。初めて作る料理はレシピが頼りだ。手軽に利用できるウェブサービスが充実し、レシピ検索をしてから料理する人も多くなった。
阿古氏は「トレンドや好みの変化により、レシピの必要性は高まっている」と述べる。クックパッドの新機能をきっかけに、レシピの著作権や家庭料理の価値についての議論は今後も続きそうだ。



