最上級グレードGにのみ用意される快適装備
日産の新型「キックス」には、最上級の「G」グレードだけに用意される豪華な装備がある。例えば「BOSEパーソナルプラスサウンドシステム」(メーカーオプション)や運転席パワーシートなどだ。これらの装備はGの価格差に見合った内容なのか。新型キックスは「X シンプルパッケージ」「X」「X+」「G」の4グレード展開で、それぞれ2WDと4WD(e-4ORCE)が選べる。2WDで比較すると、Xは325.93万円、Gは389.84万円で約64万円の価格差がある。
BOSEサウンドシステムは音楽好きだけの装備ではない
Gを象徴する装備のひとつが、BOSEパーソナルプラスサウンドシステム(メーカーオプション)だ。10個のスピーカーを備え、前席ヘッドレストにもスピーカーを内蔵することで、運転席を包み込むような音場を実現している。「自分は音楽にこだわらないから必要ない」と考える人もいるかもしれない。しかし、車内で耳にするのは音楽だけではない。ナビゲーションの案内、ハンズフリー通話、ラジオやポッドキャストなど、クルマに乗っている間は常に何らかの音を聞いている。音が自然に耳へと届く環境は、長時間運転の疲労感にも影響する。高級オーディオというより、「車内で過ごす時間そのものを快適にする装備」と考えたほうが、その価値は理解しやすい。
パワーシートは「一度使うと戻れない」装備の代表格
運転席パワーシートも、購入前は価値を感じにくい装備かもしれない。レバーを引いてシートを動かせば済む話だからだ。だが、一度使い始めると印象は変わる。細かな調整がしやすく、最適なドライビングポジションを見つけやすい。家族とクルマを共用する場合、その便利さはより実感できる。シートを前後に動かし、背もたれを起こし……という一連の動作を、軽いスイッチ操作だけで済ませられるからだ。派手な装備ではない。しかし、毎日の積み重ねが「これがあってよかった」という満足感につながる。
パノラミックガラスルーフは「走り」ではなく「景色」を変える
Gにはパノラミックガラスルーフ(電動チルト&スライド、電動格納式シェード付き)が標準装備で付いてくる。最近ではSUVでも採用例が増えてきた装備だ。青空や木漏れ日を車内に取り込める開放感は、一度体験すると印象に残る。特にロングドライブでは、後席に座る家族や子どもが喜ぶ装備でもある。もちろん、必需品ではない。しかし、旅行先でふと空を見上げたとき、「付けてよかった」と思える装備のひとつだろう。こうした"思い出"に関わる装備は、スペック表だけでは価値を測れない。
パワーバックドアは「買い物帰り」に真価を発揮する
もうひとつ注目したいのが、オートバックドアだ。Gではリモコンオートバックドアやバックドアオートクロージャーなどが標準装備となる。Xではメーカーオプションだ。この装備は、普段は地味な存在かもしれない。しかし、大きな荷物を抱えているときや、雨の日に子どもを抱っこしているときなどには、そのありがたさを実感する。SUVは荷室の使い勝手も魅力のひとつ。だからこそ、バックドアの開閉を少しでも楽にしてくれる装備は、毎日の利便性に直結する。
快適装備は「家電」と同じ発想で選ばないほうがいい
装備比較をしていると、「この機能はいくら」「この装備はいくら」という考え方になりがちだ。しかし、クルマは家電とは少し違う。テレビを買い替えれば画質は上がる。掃除機を替えれば吸引力は上がる。一方でクルマは、「毎日をどう過ごすか」を変える道具でもある。お気に入りの音楽を流しながら帰宅する時間。旅行先で家族が空を見上げる時間。座った瞬間に感じるシートの心地よさ。快適装備が提供しているのは、そうした体験そのものなのだ。
「毎日乗る人」ほどGの価値は大きい
Xの装備が不足しているわけではない。日常生活を送るうえで不便を感じることは、ほとんどないだろう。しかし、Gは「便利だから選ぶグレード」ではない。毎日の通勤。休日の買い物。年に数回の旅行。そのすべてを少しずつ快適にしてくれる。ひとつひとつの装備は小さな違いでも、それらが積み重なることで、「このクルマにしてよかった」という満足感につながっていく。もし新型キックスに長く乗るつもりなら、快適装備は単なるぜいたく品ではなく、毎日のカーライフへの投資と考えてみてもいいのではないだろうか。
編集部のひと言
住宅選びで「駅から5分」を重視する人がいるように、クルマ選びにも「毎日感じる快適さ」を重視する考え方があります。BOSEやパワーシートは、試乗では価値が分かりにくい装備かもしれません。しかし、5年、10年と付き合うことを考えると、その小さな快適さの積み重ねが、満足度の差になって現れます。販売店では、ぜひ装備表ではなく、「自分の生活がどう変わるか」という視点で見比べてみてください。



