2026年5月21日から始まる民事訴訟手続きの全面デジタル化により、書面のやり取りを前提としてきた民事裁判の実務は大きな転換点を迎える。迅速化・効率化が期待されるが、本格的な運用に当たっては、オンラインによる手続きが義務付けられる法曹関係者の習熟やシステムトラブルなどへの対応も求められそうだ。
電子提出システム「mints」のリスク
民事裁判書類電子提出システム「mints(ミンツ)」の導入に伴い、訴訟関係者には新たな注意点が生じている。改正法施行直前の14日に開かれた法律事務職員向けのオンライン勉強会では、参加者からmintsへの不安の声が聞かれた。
勉強会を主催したのは「日本弁護士補助職協会」(東京都)。参加した30人は、誤って本来とは異なる書類をmintsにアップロードしてしまった場合の対応など、想定される具体的なトラブルや対処法を共有し、実務上の不安を解消していった。
確認ミスやなりすましのリスク
デジタル化により懸念されるのが、訴訟状況などの書面に関する裁判所からの通知の見落としだ。従来、訴訟状況は郵送されていたが、デジタル化後は、mintsのアカウントに登録したメールアドレスなどで、裁判所からの通知を確認する必要がある。
弁護士業務を補助する事務職員らは、1人最大10個のmintsアカウントの取得が可能だが、それぞれ別のメールアドレスでの登録が必須となっている。東京都文京区の20代男性弁護士は「使い勝手が悪い」としたうえで、「受信盤を統一するなど工夫しないと、事務的な確認ミスが必ず起こる」と指摘する。
システム障害時の対応とセキュリティ対策
オンラインで完結するシステムに、障害が起きた場合の対応や、情報流出を防ぐ対策も確認しておく必要がある。最高裁は、mintsにシステム障害が生じた場合の具体的な対応を、ホームページで公表。弁護士はmintsによる書面の提出が義務付けられているが、システム障害が生じた場合は、従来通りの紙の書面での提出が可能となる。メールによる通知のため、裁判所をかたる不審なメールにも注意する必要がある。
時効や攻撃期間の直前にトラブルが生じる可能性もあり、民事裁判に詳しい元裁判官の高市惇史弁護士は「期間に余裕を持って手続きに取り組む必要がある」として、関係者の意識改革の必要性を指摘する。
第三者の「なりすまし」トラブルも
民事裁判のIT化に詳しい大森康宏弁護士の話は次の通り。mintsのシステムは複雑ではなく、PC操作ができる人であれば問題なく利用できるだろう。ただ、mints上で判決文を受け取れば、電子判決書の閲覧やダウンロードで送達完了とみなされる。攻撃期間は送達完了の翌日が起算日となるため、クリック一つで期間が経つことになりかねず、これまで以上に注意が必要だ。
一方、パスワードなどを入手した第三者によるなりすましトラブルも想定される。情報が流出しないよう防止策の周知徹底が継続的に必要になるだろう。本人訴訟の場合は従来通り、紙の書面で訴訟状況や主張書面の提出ができる。不安な場合、当面は紙を使った手続きをおすすめする。



