2024年に日本初の月面着陸を達成した実証機「スリム(SLIM)」に搭載された小型ロボット「レブ2」(愛称:ソラQ)が、完全自律による月面探査の詳細な解析結果がまとまった。宇宙航空研究開発機構(JAXA)と玩具大手のタカラトミー、ソニーグループ、同志社大学が6月18日に発表した。成果は米ロボット工学誌「サイエンスロボティクス」に日本時間6月11日に掲載されている。
史上最小・最軽量の月面探査ロボット
レブ2は直径8センチ、質量228グラムの球状ロボットで、史上最小・最軽量の月面探査ロボットとして開発された。スリムから高度約5メートルで分離し、月面に着地すると自動的に走行形態に変形。左右の車輪を独立して動かすことで、砂に埋もれずに走行できる設計となっている。JAXAが科学技術振興機構(JST)の「イノベーションハブ構築支援事業」を受託し、タカラトミーと共同で小型ロボット技術・制御技術の開発契約を結んで実現した。
完全自律による一連の動作を確認
地上に送られたデータの詳細解析により、レブ2は着陸後に自ら起動し、展開、姿勢制御、移動、撮影、そして重要な画像2枚の選別と送信までを、地上からの指示なしに完全自律で実施したことが判明した。1枚目の画像は前方カメラで撮影され、着陸から5日後に公開。スリムから5.08メートル離れた位置から、スリム本体と周囲の状況を鮮明に捉えた。画像処理によりスリムを正しく認識していたことも確認された。
JAXAなどは新たに2枚目の画像を公開した。これは前方カメラと背中合わせに取り付けられた背面カメラで撮影されたもので、通信障害によるデータ欠損のためスリムは写っていないが、1枚目と同じ岩石が写っていた。このことから、レブ2が1枚目と2枚目の間に13センチ移動し、180度旋回したことが裏付けられた。月面での動作時間は少なくとも1時間48分で、その間に画像処理を240回行っていた。
自律対応と技術実証の意義
一連の結果から、変形機構や走行の工夫が効果的に機能したことが確認された。通信の乱れや姿勢の異常にも自律的に対応し、探査データを送信できることを実証。宇宙用小型ロボットの開発・運用ノウハウなど、将来に役立つ知見が得られたとしている。
スリムには2体のロボットが搭載されていた。中央大学などが開発した「レブ1」は跳躍移動を試み、地上との通信には成功しレブ2の撮影データを中継したが、ソフトウェア問題により自ら撮影することはできなかった。レブ1と2により、「日本初の月面探査ロボット」「世界初の完全自律ロボットによる月面探査」「世界初の複数ロボットによる同時月面探査」「世界初の月面ロボット間通信」が達成された。
JAXA理事長「非宇宙企業との連携が大きなマイルストーン」
JAXAの山川宏理事長は「小さく、変形して運動する革新的なロボット技術を実現し、自律運用を実用化したことが最大の成果。スリム本体を撮影することで工学的ミッション全体の把握に大きく貢献した。JAXAが非宇宙企業である玩具メーカーや大企業、大学と連携したことも大きなマイルストーンとなった」と語った。
スリムの月面着陸とその後の運用
スリムは2023年9月に地球を出発し、2024年1月に月の低緯度クレーター付近の傾斜地に着陸。日本は5番目の月面着陸国となった。降下中に主エンジン1基が異常停止した影響で横倒し姿勢となり、太陽電池の発電に制約が生じたが、設計性能を超えて3回の夜を耐え、科学観測などに成功。着陸誤差は目標の100メートル級に対し約60メートルで、エンジン異常を除けば実質10メートル以下という高精度を達成した。同年8月に運用終了した。
日本初の月面着陸は、レブ2による撮影がなければ一般社会への視覚的説得力を持ち得なかった。学術的価値に加え、玩具のようなかわいらしいロボットが月面で懸命に動き、大きな成果を挙げたことは、多くの人々の共感を呼んだ。



